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法学検定

2018年度 法学検定試験結果講評

2018年12月2日に実施いたしました法学検定試験のうち,
ベーシック〈基礎〉コースおよびスタンダード〈中級〉コースの各科目から数問ずつ,
試験結果を踏まえた講評を掲載いたします。復習に,是非お役立てください。

スタンダード〈中級〉コースの講評はこちらです

ベーシック〈基礎〉コース
【法学入門】
問題2
 わが国で用いられるさまざまな法形式に関する以下の記述のうち,正しいものを1 つ選びなさい。

1 .法律は,日本国憲法の定める方法により,国権の最高機関である国会の議決を経て制定される法形式であり,国内法としては,憲法に次いで強い形式的効力をもつ。
2 .日本国憲法73 条6 号は,内閣の行う事務の1 つとして,「この憲法及び法律の規定を実施するために,命令を制定すること。」を定めている。
3 .条例とは,地方公共団体の制定する法令の形式であり,そこには,地方公共団体の長が制定する条例のほかに,地方公共団体の議会の議決を経て制定される規則も含まれる。
4 .最高裁判所は,訴訟に関する手続,弁護士,裁判所の内部規律,裁判官の弾劾および司法事務処理に関する事項について,規則を定める権限を有する。

正解:1

〔コメント〕

 この問題は,わが国で用いられるさまざまな法形式について問うもので,国会の議決を経て制定される法律について述べる肢1の内容が正しく,これが正解です。肢3を正しいとする誤答が目につきましたが,地方公共団体が法律の範囲内で制定することができるとされる条例のうち,地方公共団体の議会の議決により制定される「条例」と,地方公共団体の長が制定する「規則」とが逆に記されている点で,肢3の記述は誤りです。また,肢2を正しいとした誤答も少なくありませんでしたが,内閣の行う事務の1つとして憲法73条6号は,「命令」ではなく,「政令を制定すること」を定めています。


問題9
 裁判官の任命に関する以下の記述のうち,正しいものを1 つ選びなさい。

1 .最高裁判所判事は,天皇が任命する。
2 .地方裁判所の裁判官は,内閣が任命する。
3 .簡易裁判所の裁判官は,最高裁判所長官が任命する。
4 .簡易裁判所の裁判官は,最高裁判所が任命する。

正解:2

〔コメント〕

 この問題は,各種の裁判官の任命権がどの機関にあるかを問う問題です。肢2,肢3,肢4を正解とする解答の数がほとんど同じでしたが,正しくは肢2が正解で,肢3と肢4は誤りです。憲法80条1項は,「下級裁判所の裁判官は,最高裁判所の指名した者の名簿によつて,内閣でこれを任命する。」と定めており,地方裁判所の裁判官も簡易裁判所の裁判官も,下級裁判所の裁判官であり,内閣により任命されるのです。この点をよく確認しておけば正解を導くことができます。なお,肢1については,最高裁判所長官は天皇が任命します(憲6条2項)が,長官以外の裁判官すなわち最高裁判所判事は,内閣が任命します(憲法79条1項)。


 

【憲法】
問題5
 平等の意味に関する以下の記述のうち,正しいものを1 つ選びなさい。

1 .法適用の平等は,法を執行し適用する際に行政権や司法権が国民を差別してはならないことを要請するものである。
2 .形式的平等は,人が現実に有する事実上の差異を前提に,等しいものは等しく,等しくないものはその違いに応じて取り扱うべきことを要請し,合理的な別異取扱いであればこれを許容する趣旨である。
3 .実質的平等は,人の現実のさまざまな差異を一切捨象して原則的に一律平等に取り扱うことを要請するものであり,基本的に機会均等を意味する。
4 .相対的平等は,人の現実の差異に着目してその格差是正を行うことを要請するものであり,配分ないし結果の均等を意味する。

正解:1

〔コメント〕

 憲法14条1項の法の下の平等に関しては,様々な観点から「平等」の意味が説明されています。そこで,本問では,それぞれの「平等」の意味について正確に理解できているかを問いました。しかし,正答率は非常に低かったようです。とりわけ,相対的平等と実質的平等を勘違いしている人や形式的平等と相対的平等を勘違いしている人が多かったようです。このような勘違いを防ぐためには,これらの平等概念が,<法適用の平等と法内容の平等>,<絶対的平等と相対的平等>,<形式的平等と実質的平等>という対において語られていることを理解するとよいでしょう。
 相対的平等は,絶対的平等との対比で説明されるものです。いかなる事情があろうとも全てを機械的に均一に扱うことを要求するのが絶対的平等です。これに対して,人々には様々な差異があることを前提に,その差異に応じた等しき取扱いを求めているのが相対的平等です。したがって,相対的平等観のもとでは,事柄の性質に即応して合理的と認められる別異取扱いであれば許容されることになります。
 実質的平等は,形式的平等との対比で説明されるものです。形式的平等観のもと,「人」であるという形式面のみに着目して,すべての人を等しく取扱ったとしても,結果において格差が生じるということはあり得ます。例えば,共通の経済ルールの下で経済活動を行わせたとしても貧富の差が生じることはあるでしょう。実質的平等は,このような場合に,結果においても平等であることを求めるものです。その限りで,実質的平等は,積極的な差別是正措置(黒人や女性などのマイノリティに対して大学入試や雇用の場面において優先枠を設けるといった措置)を導き出す根拠としても主張されます。
 他方,相対的平等は,等しきものは等しく,等しくないものはその違いに応じて取扱うことを求めるのみですから,基本的には,結果の平等にまで関心を向けるものではありません。たしかに,人々の現実的な差異に着目しているという点では,相対的平等と実質的平等は似た面があるのかもしれません。しかし,これらは絶対的平等や形式的平等との対比で語られているに過ぎず,それぞれの対は特定の観点からの分類に過ぎません。こうしたことが理解できれば,上記の諸概念を混同しにくくなるのではないでしょうか。


問題14
 比較憲法的に見た違憲審査の類型に関しては,付随的審査制と抽象的審査制とが対比されている。以下の記述のうち,付随的審査制の一般的な特徴を述べたものを1 つ選びなさい。

1 .他方の類型よりも積極的な違憲審査が可能である。
2 .他方の類型よりも迅速に最終的な憲法判断がなされうる。
3 .どの裁判所も違憲審査権を行使できる。
4 .違憲判決は一般的な法的効力をもつ。

正解:3

〔コメント〕

 本問は,違憲審査制の類型に関する問題です。解答は4つの選択肢に大きく分かれました。付随的審査制と抽象的審査制という用語は見たことがあっても,その概要までは理解が進んでいなかったようです。
 付随的審査制では,司法権の行使の際に憲法上の判断が必要な場合に違憲審査がなされるもので,このことを別な観点から見れば,最高裁に限らず下級裁判所も違憲審査権が行使できることになり,3が正解となります。
 肢2と4は,一般的に言えば抽象的審査制の特徴といえます。すなわち,抽象的審査制においては,違憲審査が憲法裁判所に一元化されますので,最高裁の判断を得るまで各審級を経る必要のある付随的審査制と比較して,一般的に言えば迅速に最終的な憲法判断が可能だと考えられます。また,具体的事件とは無関係に法令自体の合憲・違憲が判断されるので,違憲判決は一般的な法的効力を有することになります。
 肢1は,違憲判断を積極的に行うかどうかは制度的,政治的,歴史的,社会的な様々な要因によって左右され,付随的審査制か抽象的審査制かという区分と直接関係がないと考えられます。なお,日本の最高裁は諸外国の裁判所と比較しても,違憲判断に消極的であることもあわせて知っておくべきでしょう。


 

【民法】
 2018年度法学検定ベーシック<基礎>コース民法において,正答率が1番低かった問題が問題13,2番目に低かったのは問題7で,いずれも問題集には載っていない問題でした。しかし,いずれの問題も,問題集で解説を丁寧に読んでいれば正解にたどり着くことのできた問題のように思います。問題集をどのように読むべきだったのかを,これら2つの問題で確認しておきましょう。


問題7
 占有に関する以下の記述のうち,誤っているものを1つ選びなさい。

1 .自宅にある家財道具の占有は,自宅を留守にしても失われない。
2 .物を他人に預けて引き渡した者は,その物の占有を失う。
3 .不動産の買主は,取得時効を援用するにあたり,売主の占有をあわせて主張することができる。
4 .所有者のない動産は,所有の意思をもって占有を始めた者が,その所有権を取得する。

正解:2

〔コメント〕
 この問題は,「物を他人に預けて引き渡した者は,その物の占有を失う」という肢2が誤りであることを指摘するものでした。おそらく,日常生活の直感では「引き渡したのだから占有を失うのだろう」と考えるのが普通でしょう。しかし,問題集には,間接占有・代理占有の説明として,物を他人に貸して引き渡しても,貸主は占有を失わないことが説明されており,そこから考えれば,正解にたどり着くことができるものです。
 問題集で勉強をする際には,単にその問題が解けたかどうかを見るだけではなく,解説も丁寧に読んで,その内容を理解しておくことが大切です。その際のポイントの1つとして,日常生活の直感に反するような情報が出てきた際に,その部分をよくチェックしておくようにするとよいでしょう。


問題13
 AはBに対して貸金債権甲を有し,BはAに対して賃料債権乙を有しており,双方の弁済期が到来している。この場合に関する以下の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 .Aが甲と乙とを相殺する場合,Bの承諾を得なければならない。
2 .甲と乙とが相殺された場合,債権額にかかわらず,甲と乙はすべて消滅する。
3 .AおよびBは,甲と乙とが相殺に適する状態にある間は,互いに履行遅滞の責任を負わない。
4 .甲と乙の双方の弁済期が到来した後に甲の消滅時効が完成した。この場合,Aは,甲を自働債権,乙を受働債権とする相殺をすることができる。

正解:4

〔コメント〕
 この問題は,相殺に関して,相殺適状が生じた後に消滅時効が完成した債権も自働債権になるという肢4を正しいと指摘するものでした。実は,表現こそ異なるものの,この選択肢と同じ趣旨の選択肢は問題集にも掲載されていましたので,これも問題集を丁寧に読んでいれば正解にたどり着けたはずの問題です。
 もっとも,ここで注目したいのは,本問では,正解である肢4よりも,相殺には両当事者の合意が必要だとする肢1や相殺適状が生じている間は当事者は履行遅滞にならないとする肢3を選んだ受験生の方が多かったということです。相殺(法定相殺)は,一方的な意思表示のみで債権を消滅させる制度である点に特徴があり,そのこと自体は問題集に書かれています。また,相殺の意思表示を行うとその効果は相殺適状の時点に遡及することも問題集に書かれています。これらの情報から,相殺には合意は必要でないこと,実際に相殺の意思表示を行うまでは債務は消滅していない(そして履行期を過ぎているから履行遅滞に陥っていること)まで読み込んでおけば,こうした誤答を選ぶことはなかったのではないかと思います。
 そうすると,問題集で勉強する際のもう1つのポイントとして,そこに書かれている情報から,直接は書かれていないことにも想像をめぐらせることが必要だということを指摘できます。例えば「Aの成立ためにはBが要件となる」と書かれていれば,「Bが満たされなければAは成立しない」「Aが成立しているのならBは満たされているはずだ」「Aの成立のためにはCは必要ない」などとたくさんの言い換えをしてみるとよいでしょう。


 

【刑法】
問題9
 Xが,12 歳の子どもAに対して,Bの財物を盗み取るよう命じて,Aがこれを実行した。この場合に関する以下の記述のうち,判例の趣旨に照らして,正しいものの組合せを1 つ選びなさい。

ア.Xには,窃盗罪の間接正犯が成立しうる。
イ.Xには,窃盗罪の間接正犯は成立しえない。
ウ.Xには,窃盗罪の共同正犯が成立しうる。
エ.Xには,窃盗罪の共同正犯は成立しえない。

1 .アウ  2 .アエ  3 .イウ  4 .イエ

正解:1

〔コメント〕

 設問のような場合,刑事未成年者に命じて犯罪行為をさせる者に間接正犯が成立しえますが,常に間接正犯が成立するわけではなく,共同正犯が成立することもあります。判例においても,被告人が12歳の長男に強盗の実行を指示命令した事案について,長男には是非弁別能力があり,被告人の指示命令が長男の意思を抑圧するに足りる程度のものではなく,長男が自らの意思により強盗の実行を決意した上,臨機応変に対処して強盗を完遂したとして,被告人に強盗の間接正犯の成立を認めず,共同正犯の成立を認めたものがありますので注意してください(最決平13・10・25刑集55・6・519)。


問題10
 以下の記述のうち,正しいものを1 つ選びなさい。

1 .現行法上,自殺は不可罰とされているため,自殺の教唆および幇助も不可罰とされており,嘱託殺および承諾殺のみが同意殺人罪として処罰されている。
2 .同意殺人罪の未遂は処罰される。
3 .Xは,Aから冗談で「殺してくれ」と言われたのに,Aの言葉を本気にしてAを殺害した。
 このとき,Aに確認すれば容易にAの真意に気づけたにもかかわらず,Xが安易にAの言葉を信用したのであれば,同意殺人罪ではなく,通常の殺人罪が成立する。
4 .XがAに脅迫を加えて,殺害に同意するしかないという精神状態にAを陥らせ,同意を得てAを殺害した場合,Aが殺害されることに同意していた以上,通常の殺人罪ではなく,同意殺人罪が成立し,XがAを脅迫して殺害に同意させた点は量刑において考慮されるにすぎない。

正解:2

〔コメント〕
 自殺関与罪・同意殺人罪に関する問題です。
 正解は,肢2です。刑法203条は,同意殺人罪の未遂を処罰することとしています。
 肢1は誤りです。刑法202条は,嘱託殺および承諾殺(同意殺人罪)と,自殺の教唆および幇助(自殺関与罪)の両者を処罰することとしています。
 肢3も誤りです。客観的には通常の殺人罪が実現されていますが,Xは同意殺人罪の事実しか認識していないので,刑法38条2項によりXには通常の殺人罪は成立せず,構成要件の重なり合う軽い同意殺人罪が成立するにすぎません。肢3を正解とする誤答が多く,正答をかなり上回りました。いくらXが軽率だったとしても,Aに同意があると思っている以上,Xに通常の殺人罪の故意があったとはいえません。その点を見誤った受験生が多かったのかもしれません。
 肢4も誤りです。最決昭59・3・27刑集38・5・2064や最決平16・1・20刑集58・1・1は,殺人の意思をもって被害者に暴行・脅迫を加えて川や海に飛び込ませた事案において殺人(未遂)罪の成立を認めています。こうした判例の趣旨からすると,Xのように脅迫により心理的に強制して被害者の同意を得て殺害した場合には,同意殺人罪ではなく通常の殺人罪が成立する余地があります。

 

スタンダード〈中級〉コース
【法学一般】
 法学一般については全体によい成績でしたが,問題5につまずいた人がやや目につきました。


問題5
 「新法の施行前に行うべきであつた保険給付で新法の施行の際まだ行つていないものについては,この法律に別段の規定があるものを除くほか,なお従前の例による。」という条文について,「別段の規定」がなかったと仮定した場合,以下の記述のうち,正しい解釈を1 つ選びなさい。

1 .新法の施行前に行うべきであった保険給付で新法の施行の際にまだ行っていないものについては,従来からの慣例に従い,新法の定めに基づき行うことができる。
2 .新法の施行前に行うべきであった保険給付で新法の施行の際にまだ行っていないものについては,慣例によるべき場合にあっては,これを遵守しなければならない。
3 .新法の施行前に行うべきであった保険給付で新法の施行の際にまだ行っていないものについては,失効した旧法の規定の定めるところに従って行わなければならない。
4 .新法の施行前に行うべきであった保険給付で新法の施行の際にまだ行っていないものについては,具体的事情を考慮の上,新法または旧法を適用することができる。

正解:3

〔コメント〕

 この問題は,「なお従前の例による」という法令用語の意味を問う問題です。これは,法令の制定や改廃があった場合に,新法令を一挙に適用することがもたらす混乱を回避し,新制度への円滑な移行を可能にするために,一定限度で旧制度を存続させる必要がある場合にしばしば用いられる表現です。これは,旧法の該当する規定が定めていたところに従うべきことを意味しており,旧法はすでに効力を失っていますが,「なお従前の例による」と定めるその規定自体を法令の根拠にして,旧制度を存続させようという趣旨なのです。したがって,「なお従前の例による」が唯一この意味で正しく理解されている肢3が正解です。新法に基づき行うことができるとする肢1,慣例によるべき場合はこれを遵守すべきとする肢2,具体的事情を考慮の上で新法または旧法を適用することができるとする肢4は,いずれも「なお従前の例による」の意味としては誤りです。法令の制定や改廃が盛んに行われる今日ではよく用いられる立法技術ですので,しっかり理解しておきましょう。


 

【憲法】
問題14
 付随的審査制における憲法判断の方法に関する以下の記述のうち,誤っているものを1つ選びなさい。

1 .法令の規定に含まれる文言またはその意味の一部を違憲とする判断方法を,部分違憲(一部違憲)という。
2 .法令の全部違憲とは,法令の規定の全部が違憲であるとする判断方法であり,この場合には当該規定は一般的に無効となる。
3 .合憲限定解釈の考え方によれば,法令の規定の一部が違憲と評価される場合であっても,違憲判断を避けるような法令の解釈が可能であればそうした解釈をとるべきである。
4 .法令の規定が当該事件に適用される限りで違憲とする判断方法を,適用違憲という。

正解:2

〔コメント〕

 本問は,憲法判断の方法に関する問題でした。ある程度学修の進んだ学生でも,憲法訴訟については苦手意識をもっている場合が少なくないようですので,この機会に確認しておいてください。
 正解は肢2でしたが,肢3を選んだ受験者も多かったようです。肢2の説明は,法令の全部違憲は法令の規定の全部が違憲であるとする判断方法であるという前半は正しいですが,当該規定は一般的に無効となるという後半部分が誤りです。本問で問われている付随的審査制においては,全部違憲判決であっても,法令が一般的に無効となるという考え方は判例・通説上,とられていません。もっとも,純粋な個別的効力説が徹底されているわけでもなく,事実上の一般的効力があると言われることもあります。
 肢4を選んだ受験者も一定程度いたようですが,これは適用違憲の通常の説明ですので,確認しておいてください。


 

【民法】
 2018年度法学検定スタンダード<中級>コース民法は,2017年の民法改正を反映した初めての法学検定の問題となりました。問題集から出題された問題については例年と平均点も変わりませんでしたが,問題集からの出題でない問題では苦戦したようです。今回,正答率が1番低かったのは問題11,2番目に低かったのは問題14でしたが,いずれも問題集には掲載されていない問題でした。


問題11
 詐害行為取消権に関する以下の記述のうち,誤っているものを1つ選びなさい。

1 .詐害行為取消請求を認容する確定判決は,債務者に対してもその効力を有する。
2 .債務者がした不動産の処分行為が詐害行為にあたるとして取り消されたときは,債権者は,その選択に従い,受益者に対しその不動産の返還またはその価額の償還を請求することができる。
3 .債務者がした動産の処分行為が詐害行為にあたるときは,債権者は,その処分行為の取消しとともに,受益者または転得者に対して当該動産を自己に引き渡すことを求めることができる。
4 .債務者が第三者に対して有する金銭債権についてした債務の免除について,債権者が詐害行為取消請求をする場合,取消しを請求することができるのは,自己の債権の額の範囲に限られる。

正解:2

〔コメント〕

 この問題は,詐害行為取消権の債権者が,受益者に対して現物返還と価額償還の請求を「その選択に従い」行うことができるとする肢2を誤りであると指摘するものでした。誤っている部分が「その選択に従い」(つまり債権者が自由に選択できる)という一言にのみ現れているため,見落としてしまって誤りを含まない肢と理解した受験生が多かったのかもしれません。実は,誤答である肢3あるいは肢4を選択した受験生の方が多くいました。
 これらの選択肢は,いずれも問われている内容は条文に書かれているものなのですが,債権法改正によって,条文は,細かな点まで規定した複雑なものとなり,数も増えています。これらを本当にすべて覚えるというのは大変なことですが,1つ1つの条文のもつ意味を考えながら確実に自分の知識とすることで,誤答を選んでしまう確率は減るはずです。また,問題を読むにあたっては,(「その選択に従い」というたった7文字の表現のように)細かな表現にも目を配り,その言葉が入っていることの意味を考えましょう。


問題14
 使用貸借に関する以下の記述のうち,誤っているものを1つ選びなさい。

1 .使用貸借が書面で合意された。この場合,貸主は,借主が目的物を受け取るまで,契約の解除をすることができる。
2 .借主が契約によって定まった用法に従わずに使用・収益をしたときは,貸主は,契約の解除をすることができる。
3 .当事者が使用貸借の期間および使用・収益の目的を定めなかったときは,貸主は,いつでも契約の解除をすることができる。
4 .当事者が使用貸借の期間を定めたときであっても,借主は,いつでも契約の解除をすることができる。

正解:1

〔コメント〕

 この問題は,使用貸借においては,原則として,借用物が引き渡されるまで貸主からの解除が認められているところ,書面で合意された使用貸借については,例外として,この解除権が認められないことを指摘するものです(解除できるとする肢1を誤りと指摘するもの)。「原則と例外」という組み合わせで規定を組み立てることは,法制度の基本的な構造ですから,情報をそうした構造に沿ってきちんと整理して,頭の中に置くことが必要です。
 この問題でも,誤答である肢3あるいは肢4を選ぶ受験生の方が,正答を選ぶ受験生より多くいました。肢3・肢4は,当事者の任意の解除権について問う問題でした。契約の類型ごとに,当事者の一方または双方に任意の解除権が与えられていることがあり,こうしたものはまとめて整理して置くことが必要でしょう。


 

【刑法】
問題2
近日中にアップ予定です

問題5
 正当防衛に関する以下の記述のうち,判例に照らして,誤っているものを1 つ選びなさい。

1 .正当防衛の成立には防衛の意思が必要であるから,偶然防衛の場合,正当防衛は成立しない。
2 .憤激・逆上していても,防衛の意思が直ちに失われるわけではないため,正当防衛は成立しうる。
3 .攻撃の意思が併存していても,防衛の意思は認められうるが,攻撃を受けたのに乗じて積極的な加害行為に出たときは,防衛の意思が認められないため,正当防衛は成立しない。
4 .相手の侵害を予期し,その機会を利用して積極的に相手に加害行為をする意思で侵害に臨んだときは,防衛の意思が認められないため,正当防衛は成立しない。

正解:4

〔コメント〕

 本問は,正当防衛における「防衛の意思」に関する判例の理解を問うもので,その形式は,4つの選択肢の中から誤っているものを1つ選ぶというものでした。正解(誤っているもの)は,肢4です。ところが,結果をみると,肢1(正しいもの)を誤って選んでしまった受験生が60%に達する一方,正解である肢4を選んだ受験生は,11%にとどまりました。肢4を誤って正解から除いてしまう受験生が出ることは予想していましたが,肢1を選ぶ受験生がこんなにたくさん出ることは予想外でした。以下,解説を加えておきます。基本的なことなので,この機会にしっかり理解してください。
 判例は,大審院の時代から,防衛の意思を正当防衛の要件としています(大判昭11・12・7刑集15・1561)。そして,防衛の意思が認められるためには,急迫不正の侵害にあたる事実を認識していることが必要とされています。そうすると,偶然防衛の場合,正当防衛は成立しません。そもそも偶然防衛とは,たとえば,AがXに向けてけん銃を発射しようとしていたところ,Xが,それと知らずにAに向けてけん銃を発射し,Aを死亡させた場合のように,急迫不正の侵害にあたる事実を認識せずに行為に出て,偶然,正当防衛と同じ結果になった場合をいいます。この場合,急迫不正の侵害にあたる事実を認識していないため,防衛の意思が認められず,正当防衛は成立しないのです。したがって,肢1は,正しいということになります。
 逆に,急迫不正の侵害にあたる事実を認識し,かつ,侵害を避けるために行為に出た場合には,憤激・逆上し,あるいは,攻撃の意思が併存していても,防衛の意思が認められ,正当防衛が成立するとされています(最判昭46・11・16刑集25・8・996,最判昭50・11・28刑集29・10・983)。ただし,反撃行為に出た時点で,積極的に加害行為をする意思が生じていた場合には,防衛の意思は否定され,正当防衛は成立しません(前掲最判昭46・11・16,最判昭50・11・28刑集29・10・983)。したがって,肢2,肢3も,正しいということになります。
 やや難しいのは,肢4です。正当防衛が成立しないという結論は正しいのですが,判例に照らすと,その理由が誤っています。判例によれば,積極的に加害行為をする意思が,反撃行為の時点で初めて生じたのではなく,それよりも前の時点,つまり,相手の侵害より前の時点で生じていたときは,防衛の意思ではなく,侵害の急迫性が否定されます(最決昭52・7・21刑集31・4・747)。したがって,肢4は,誤っています。
なお,近時,最高裁は,侵害を予期して対抗行為に出た場合の急迫性の要件について,対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして判断すべきであり,積極的に加害行為をする意思で侵害に臨んだ場合を含め,緊急状況の下で公的機関による法的保護を求めることが期待できないときに私人による対抗行為を許容した刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には,急迫性の要件を充たさないとしました(最決平29・4・26刑集71・4・275)。これも重要な判例ですので,ぜひとも押さえておきたいところです。


 

【民事訴訟法】
近日中にアップ予定です

 

【刑事訴訟法】
問題3
 以下のうち,検察官が行うことのできる行為の組み合わせとして,正しいものを1つ選びなさい。

ア.逮捕状の緊急執行
イ.身体の拘束を受けている被疑者と弁護人との接見の日時の指定
ウ.被告人の勾留の請求
エ.被告人の保釈の請求

1 .アイ  2 .アウ  3 .アエ  4 .イウ  5 .ウエ

正解:1

〔コメント〕

 この問題は,問題集から直接出題したものではありませんが,注意深く問題集を読んでいれば正しい解答に到達できるはずのものとして出題しました。しかし,正答率がかなり低い結果となりましたので,この問題の趣旨を説明します。
 検察官の権限の有無は,次のとおりになります。
ア.検察官は通常逮捕の権限をもっています(刑訴法199条1項)。そして,通常逮捕の権限のある者には,逮捕状の緊急執行の権限が認められています(刑訴法201条2項・73条3項)。したがって,検察官にはこの権限があります。
イ.いわゆる接見指定の権限ですが,刑事訴訟法39条3項により,検察官にこの権限が認められています。
ウ.被告人の勾留は,公判裁判所の権限です(刑訴法60条。なお,第1回公判期日前は,予断防止の観点から,令状裁判官が勾留の要件を審査します〔刑訴法280条〕)。したがって,検察官には被告人の勾留を請求する権限はありません。
エ.保釈請求権をもつ者は,刑事訴訟法88条1項により,被告人,弁護人,その他一定の近親者等です,検察官には,保釈請求の権限はありません。
 以上の検討により,検察官に権限が認められるのは,ア,イであり,したがって,正解は1です。実際の試験結果で正しくこの結論を選択した受験者は,7%にとどまりました。誤答を選択した受験者は,その割合が多い順に,肢4(イウ・○×。35%),肢2(アウ・○×。33%),肢5(ウエ・××。18%),肢3(アエ・○×。7%)という結果でした。これから推測すると,誤答のほとんどは,誤って「検察官には,被告人勾留の請求権がある」と考えたためであろうと思われます。しかし,上記のカギカッコ内の文が誤っていることは,問題集の問題7,問題20,問題56の解説で再三にわたり指摘しているところです。実質的に考えても,被告人の身柄について第一義的に関心を持つべき主体は,公判裁判所であって,検察官ではありません。また,起訴後の公判手続において検察官が相手方当事者である被告人の身柄拘束を請求できるとするのは,当事者対等の考え方にも反します。現行法の仕組みを理解するときは,まず条文をしっかり確認することが大切ですが,そのような規定になっているのはなぜか考えてみるのがよいと思います。また,問題集は,解答の確認のためだけでなく,解説も含めて読みこむことにより,知識や理解が定着するように活用してください。


 

【商法】
 2018年度法学検定試験スタンダード〈中級〉コースにおいて,正解率が低かった問題として,問題10,問題13についてコメントをします。両問とも,法学検定試験の問題集からの出題ではなく,2018年度法学検定試験に際して新たに作成された問題です。


問題10
 取締役・執行役の自己のためにする利益相反取引に関する以下の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 .指名委員会等設置会社における執行役と会社との間の利益相反取引について,監査委員会の承認を得ている場合には,当該利益相反取引から会社に損害が生じたときであっても,その責任を追及する者が,当該執行役が任務を怠ったことを証明しなければ,当該執行役の会社に対する損害賠償責任は認められない。
2 .監査等委員会設置会社における監査等委員ではない取締役と会社との間の利益相反取引について,監査等委員会の承認を得ている場合には,当該利益相反取引から会社に損害が生じたときであっても,その責任を追及する者が,当該取締役が任務を怠ったことを証明しなければ,当該取締役の会社に対する損害賠償責任は認められない。
3 .監査役設置会社における取締役と会社との間の利益相反取引について,取締役会の承認を得ている場合には,当該利益相反取引から会社に損害が生じたときであっても,その責任を追及する者が,当該取締役が任務を怠ったことを証明しなければ,当該取締役の会社に対する損害賠償責任は認められない。
4 .業務執行取締役でない取締役が会社と責任限定契約を結んでいる場合には,会社と当該取締役との間の利益相反取引によって会社に損害が生じたときであっても,故意・重過失がない限り,当該取締役の会社に対する損害賠償責任が当該責任限定契約の内容に応じて限定される。

正解:2

〔コメント〕

 本問は,利益相反取引の規制について確認する問題です。もっとも,知識確認だけでなく,文章読解力・論理的思考力が要求される面があり,1問あたりの検討時間の短い中では難度が高くみえたかもしれません。
 利益相反取引により会社が損害を被った場合には,一定の取締役は任務を怠ったものと推定されます(会社423条3項)。しかし,平成26年会社法改正で導入された監査等委員会設置会社においては,監査等委員が監査に留まらず,経営の効率性・相当性も判断しうることを捉え,監査等委員以外の取締役と会社との利益相反取引について監査等委員会の承認がある場合には,会社423条3項は適用されず(同条4項),責任追及者は,利益相反取引により会社が損害を被ったこととともに,取締役が任務を怠ったことを証明しなければならないとされています。選択肢1〜3は,この監査等委員会設置会社の特則をたずねるものです。この特則自体は2018年度問題集の問題61の選択肢3の解説で解説しています。選択肢4については,責任一部免除に関して,自己のための利益相反取引を対象としない旨(会社428条)が定められている点を問うものであり,2018年度問題集の問題64の選択肢1で解説しています。正解(正しい選択肢)は,2です。
 いずれにせよ,問いかけの切り口が異なり,文章読解力・論理的思考力が要求される面があるため,受験者に戸惑いが生じたかもしれません。


問題13
 計算書類や会計帳簿の開示に関する以下の記述のうち,正しいものを1 つ選びなさい。なお,見解が分かれている場合には,最高裁判所の判例によるものとする。

1 .株式会社は,定時株主総会の終結後遅滞なく,計算書類を公告しなければならない。
2 .株式会社の会計帳簿を当該会社の株主が閲覧しようとする場合,議決権保有比率または持株比率の要件を満たすとともに,裁判所の許可を得なければならない。
3 .株主が譲渡制限株式の譲渡に備え株式の適正な価額を算定するためとして会計帳簿の閲覧を請求した場合,当該請求を受けた株式会社は,当該請求が株主の権利の確保または行使に関しての調査とはいえないことを理由として請求を拒絶できる。
4 .株式会社に対して会計帳簿の閲覧を請求した株主が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営む者であった場合,当該株主が会計帳簿の閲覧によって知りうる情報を自己の競業に利用する主観的意図がないことを証明したとしても,当該株式会社は閲覧請求を拒絶できる。

正解:4

〔コメント〕

 本問は,計算書類および会計帳簿の開示に関する規制を問う問題です。正解(正しい選択肢)は4です。誤って選択するものが多かった選択肢1は,「計算書類」が貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表(会社435条2項,会社則116条,会社計算59条1項)であるのに対し,公告対象が貸借対照表(大会社にあっては,貸借対書表および損益計算書)のみとされている点(会社440条)を確認するものです。
 次に誤って選択するものが多かったのは,選択肢3です。切り口は異なりますが,問題集の問題74の選択肢2と同一内容を問うています。正解の選択肢である問題4も,問題74の選択肢3で扱いますが,判例の取扱い(最決平21・1・15民集63・1・1)を確認する点では,基本的なテキストや判例集での学習が必要となります。
 基本的なテキストと問題集を往復することで,知識の定着をするような学習を期待します。


 

【行政法】
問題2
 法律の留保に関する以下の記述のうち,誤っているものを1つ選びなさい。

1 .「消防長……は,……延焼防止のためやむを得ないと認めるときは,延焼の虞がある消防対象物……を……処分……することができる」と定める消防法29 条2 項は,根拠規範である。
2 .「代執行のために現場に派遣される執行責任者は,その者が執行責任者たる本人であることを示すべき証票を携帯し……なければならない」と定める行政代執行法4 条は,根拠規範とはいえない。
3 .「警察は……交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする」と定める警察法2 条1 項は,警察が強制的に自動車の一斉検問を行う根拠規範である。
4 .「何人も,つきまとい等をして,その相手方に身体の安全,住居等の平穏若しくは名誉が害され,又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせてはならない」と定めるストーカー行為等の規制等に関する法律3 条は,根拠規範とはいえない。

正解:3

〔コメント〕

 本問は「法律による行政の原理」の内容である「法律の留保」の観点から行政活動に求められる「根拠規範」とは何か,具体的な法令の条文について判断できるかを問う問題です。「法律の留保」「根拠規範」という言葉は行政法教科書には必ず書いてある基本的な事柄ですが,正答率はかなり低かったようです。実はこの結果は事前にある程度予想していました。
 というのも,多くの行政法教科書においては,根拠規範とは一体何かという重要な点について十分な説明がされておらず,初めて行政法を学ぶ人が根拠規範について具体的に理解することが難しいからです。
 根拠規範とは,@「誰が」(権限を有する行政庁)A「どういう場合に」(要件)B「どういうことができるか」(効果)を定める規範であり,侵害的な行為など一定の行政活動は,このような内容を定める根拠規範があることによって初めて法的に正当化されるというのが「法律の留保」の考え方です。
 はじめて聞いたという人も少なくないかもしれませんが,実はみなさんは刑法で同じことを学んでいます。刑法199条は(@裁判所は)A「人を殺した者」(要件)をB「死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する」(効果)ことを定めていると理解することができます。刑法においてはAが構成要件該当性の判断で問われるのであり,刑法の罪刑法定主義と同様の考え方が行政法においてもとられているのです。
 根拠規範の具体的な定めは,行政法総論において行政裁量の有無が問われる際,根拠規範のA要件に裁量が認められる場合が要件裁量,B効果に裁量が認められる場合が効果裁量というように行政裁量との関係で重要な意味を持つほか,行政救済法における重要論点である処分性,原告適格のいずれにおいても根拠規範の定めが出発点となります(行政事件訴訟法9条2項参照)。大雑把にいえば根拠規範の定めるB効果に着目し,「公権力の行使」といえるかを問うのが処分性の問題で,根拠規範の定めるA要件に着目し,原告の「法律上の利益」を保護しているといえるかを問うのが第三者の原告適格の問題です。
 このように根拠規範の定めは行政法の中核に位置するのであり,根拠規範の内容を常に意識することが行政法をより理解する上で極めて重要です。本問をきっかけにして,根拠規範の具体的内容に注意するように心がけてください。


問題13
 申請型義務付け訴訟に関する以下の記述のうち,誤っているものを1つ選びなさい。

1 .法令に基づく申請または審査請求に対し相当の期間内に何らの処分または裁決がなされない場合,申請型義務付け訴訟を提起することができるが,訴えの提起に際しては,不作為の違法確認の訴えを併合提起しなければならない。
2 .この訴訟の審理においては,併合提起された訴えについてのみ終局判決をすることがより迅速な争訟の解決に資すると認めるときは,当該訴えについてのみ終局判決をすることができる。
3 .この訴訟は,法令に基づく申請を拒否する処分が無効なときだけでなく,当該処分が取り消されるべきものであるにすぎないときにも提起することができるが,前者の場合には無効確認訴訟を,後者の場合には取消訴訟を併合提起しなければならない。
4 .この訴訟については,行政庁が処分または裁決をすべきであることが処分または裁決の根拠となる法令の規定から明らかであるときに限り,義務付け判決がなされる。

正解:4

〔コメント〕

 本問は,申請型義務付け訴訟の訴訟要件と本案勝訴要件に関する問題です。行政事件訴訟法37条の3の規定に目を通していれば解ける問題ですが,正答率は28.1%とやや低めでした。同条5項は,「行政庁がその処分若しくは裁決をすべきであることがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分若しくは裁決をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは,裁判所は,その義務付けの訴えに係る処分又は裁決をすべき旨を命ずる判決をする。」と定めています。羈束処分だけでなく,裁量処分であっても,義務付け判決がなされることはあるので,肢4の「限り」に着目して,当該選択肢が誤りであることを導く必要があります。肢1から肢3は,いずれも併合提起要件に関するものです。同条1項・3項・6項を確認しておきましょう。


 

【基本法総合】
問題3
 議院内閣制と大統領制に関する以下の記述のうち,誤っているものを1つ選びなさい。

1 .議院内閣制は,議会と内閣を独立で対等な関係とみなす権力分立原理に基づくものの,内閣の存立を議会の信任に係らしめることで,内閣の議会に対する責任の追及を可能にする統治の仕組みである。
2 .議院内閣制は,内閣の構成員である首相と大臣が,議会の議員の中から選任され,議員の地位を兼任することを通常の状態とする統治の仕組みである。
3 .大統領制は,議会の議員と大統領が別個に選挙され,相互の信任関係が生じることのない,厳格な権力分立原理に基づく統治の仕組みである。
4 .大統領制は,大統領が議会の議員を兼任することについては,これを許さないものの,大統領によって選任される大臣が,議会の議員を兼任することについては,これを許容する統治の仕組みである。

正解:4

〔コメント〕

 本問は、議院内閣制と大統領制という、民主制国家の代表的な統治制度の理解を尋ねるもので、肢1と肢2は、議院内閣制についての設問であり、肢3と肢4は、大統領制についての設問です。
 議院内閣制も大統領制も、現実の統治制度上は様々なバリエーションがあるため、ここではその典型が問われていると理解しなければなりません。この前提で議院内閣制とは、立法府(議会)と行政府(内閣)が一応分立しているものの、内閣の構成に議会が主導的に関与し、内閣の存続を議会の信任にかからしめる統治制度であると理解されます。また、大統領制とは、立法府と行政府が完全に分離していて、行政府の長である大統領が立法府とは別個に民選とされる統治制度と理解されます。それゆえ、議院内閣制下の内閣は対議会責任を負う存在であり、内閣の構成員も議会から供給される(大臣は議員を兼任する)のが通常になります。逆に、大統領制下の行政府は対議会責任を負わず、さらに行政府の構成員も議会とは別個に供給される(大臣は議員を兼任しない)のが通常になります。
 もちろん、これはあくまでも典型の話であって、現実の統治制度の中には、大統領制の要素を加味した議院内閣制(フランスの統治制度は、もともと議院内閣制であったが、大統領制の要素を強く加味した結果、現在では半大統領制と呼ばれることも多い)や、議院内閣制の要素を加味した大統領制(韓国の大統領制)も一部には見られます。しかし、何が典型で何がバリエーションなのかを理解しておくことは重要であって、統治制度の特色を把握するためにも、典型を見失わないようにしなければなりません。


問題14
 以下の記述のうち,判例・裁判例に照らして,正しいものを1つ選びなさい。

1 .Xは,妻Aと2 人でX宅に居住していたが,Aが2 泊3 日の旅行に行っている間にX宅に火をつけ,全焼させた。Xには非現住建造物等放火罪が成立する。
2 .Xは,Aの住むA宅を全焼させようと考え,火のついた新聞紙をA宅の窓から投げ入れたところ,その部屋の畳2 枚が燃え,火は消えた。Xには現住建造物等放火未遂罪が成立する。
3 .Xは,抵当権の設定されているX所有の家に1 人で暮らしていた。Xは,この家に火をつけ,全焼させたが,周囲に住宅などはなく,公共の危険はまったく生じなかった。Xに非現住建造物等放火罪は成立しない。
4 .Xは,A宅に住むAとその妻Bを殺害した後,A宅に火をつけ,全焼させた。Xは,A宅に住んでいるのはAとBだけだと思っていたが,実際にはその子CもA宅に住んでおり,Cは,外出していたため無事だった。Xには現住建造物等放火罪が成立する。したのであれば,同意殺人罪ではなく,通常の殺人罪が成立する。

正解:2

〔コメント〕

 放火の罪に関する問題です。
 正答は,肢2です。正答率が低かったのですが,畳が独立に燃焼しているため現住建造物等放火罪の既遂罪が成立すると考えた受験生が多かったのかもしれません。しかし,畳は,毀損せずに取り外すことができるので建造物の一部ではありません。したがって,畳が独立に燃焼しても,刑法108条にいう「焼損した」にはあたらず,現住建造物等放火罪は未遂罪にとどまります。あるいは,畳は建造物の一部でない以上,刑法110条1項の建造物等以外放火罪が成立するにすぎないと考えた受験生もいたかもしれませんが,XはAの住むA宅を全焼させようと考えて放火行為に及んでいますので,現住建造物等放火罪が問題となります。
 肢1は誤りです。Aは旅行から帰ればX宅に居住するはずであり,Aの旅行中もX宅の使用形態に変更はないため,現住性は失われず,現住建造物等放火罪が成立します。
 肢3も誤りです。Xが燃やしたのは,Xの所有する非現住建造物ですが,抵当権が設定されているので,刑法115条により他人の物と同様に扱われます。そのため,刑法109条2項ではなく,刑法109条1項の罪が問題になります。刑法109条1項の罪は,刑法109条2項の罪と違って,焼損したといえれば既遂に達し,公共の危険の発生は要件となりません。したがって,Xには非現住建造物等放火罪が成立します。
 肢4も誤りです。客観的には現住建造物等放火罪が実現されていますが,Xは,A宅の居住者全員が死亡していると思っており,非現住建造物等放火罪の事実しか認識していません。したがって,刑法38条2項により現住建造物等放火罪は成立せず,構成要件の重なり合う軽い非現住建造物等放火罪が成立します。肢4を正解とする誤答が多く,正答を上回りました。Xに現住建造物等放火罪の故意がなかった点を見誤った受験生が多かったのかもしれません。




 


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