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法学検定

2002年実施「法学検定試験」2級「講評」

 2002年度の法学検定試験2級は11月24日(日)に実施いたしましたが、受験者の方からのご要望により、「講評」を掲載することといたしました。
 試験問題の解説につきましては『2003年法学検定試験2級ガイドブック』(2003年4月上旬刊行予定)に「巻末資料」としまして掲載する予定ですのでご参照ください。

ご意見・ご感想は下記アドレスまで
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■法学基礎論 講評
 法学基礎論は5点満点で、平均点約3.935点であった。これは100点満点でいえば約79点の出来であって、昨年の約53点に比べると相当にあがっている。受験者数3881人中、満点は約32%の1266人もおり、本年の場合、成績のよい人たちは法学基礎論では取りこぼしをしなかったということであろう。
 各問の正解率は、問題1が90.3%、問題2が78.3%、問3が81.3%、問題4が54.2%、問題5が89.3%であった。問題4の法学史の問題が最も難しかったようである。これは、サヴィニー、イエーリング、イエリネック、エールリッヒという著名なヨーロッパの法律家の業績を問うものであり、やや名前の似ていて、著名度もこの中では低いイエリネックを入れて少し問題を難しくはしたが、他の3名は『2級ガイドブック』にも名前が登場しているのだから、もう少しできてもよいのではないかと思われる。このような問題に正解することに何の意味があるのかと疑問を抱く人もいるであろうが、現在の表面的な現象を追って小手先の解釈論を振り回すだけの法律家ではなく、歴史的認識に裏づけられた教養を背景とした厚みのある法律論を展開できる法律家を社会は求めているといえるのではないだろうか。この法学検定試験2級においてあえて法学基礎論が全コースの必修科目とされている趣旨は上記のような考えに基づくものであって、法学史、法制史のテキスト等を参考にもう少し時間を割いて基礎法についての勉強をしてもらいたい。


■民法 講評
 2級民法は、3級民法を事前に試験問題集を予習しないで受けた場合よりは難度をやや高くし、現行司法試験の択一式のレベルよりはやや易しいレベルに設定している。法科大学院に法学既修者として入学するための望ましい知識レベルを測る物差しとしても利用可能であろう。
 結果は、組み合わせ問題が昨年の7問から2問と激減したにもかかわらず、平均点が、10点満点で3.8点と、昨年より0.1ポイント低下した。満点者は0.2%とあいかわらず少ない。
 以下、正解率の低かったいくつかの問題を取り上げる。
 正解率がわずかに11%と極端に低かったのが問題6である。これは、債権者代位権の転用事例に関する重要判例の知識を問うものである。選択肢5を選んだ者が44%もいたが、このような代位権の転用は最判昭和49年11月29日民集28巻8号1670頁が明確に否定しており、保険会社の約款改正によってようやく実現したものである。選択肢2を選んだ者も32%もいたが、最判昭和50年3月6日民集29巻3号203頁はこのような転用を認めた。選択肢4は、最判平成11年11月24日民集53巻8号1899頁によって認められた転用類型であるが、代位権により保全される債権は抵当権の被担保債権ではないことを再度判決文にあたって確認しよう。
 4つの選択肢からの選択であるにもかかわらず、2番目に正解率が低く(22%)、誤った選択肢3を選んだ者が37%にも達したのが、問題3である。民法200条の「占有の侵奪」の意味、民法193条、194条は、192条の要件を満たした上で、盗品の場合にはじめて適用される規定である点に注意しよう。選択肢4を選んだ者も28%もいたが、不法行為の成立のためには、不法占有についての故意・過失が必要である。
 問題10は、正解率が25%と3番目に低かったが、受験生の解答が他の選択肢にも均等に分散している点で特徴がある。人工授精を含む生殖補助医療の結果、生まれてくる子どもの家族内での位置づけをめぐって、民法改正が法制審議会で議論されているが、本問は、現行法での解釈を問うものである。このように解答が分散したことは、全体に家族法領域の不勉強ぶりが推測される。従来の司法試験でも家族法のウエイトは低いが、少なくとも、基礎的なところは、きちんと押さえておく必要がある。
 問題8も、正解(選択肢5)を選んだ者は29%なのに、42%が選択肢2を選んだ。組み合わせ問題であり、いずれも正しい記述オを含んでいる。記述アは、タイヤの故障および修理代金は、Cに自動車の所有権を取得させることができなかったということと相当因果関係のある損害ではないから、賠償請求できず、誤りである。記述エは、民法189条1項を類推するのが判例(大判大正14年1月20日民集4巻1頁)である。不当利得と損害賠償の要件・効果を対比して整理しておこう。
 過半数の受験者が正解に達したのは、問題2、5のみであった。とりわけ、問題5は、4択問題であったこともあってか、77%の高率であった。
 2級民法といっても特別のものではなく、条文の意味と基本的な判例についての基礎知識をベースに、制度の趣旨や存在意義についての正確な理解と論理的能力を養っていくことが、民法マスターへの何よりの早道である。


■憲法 講評
 憲法は、10点満点で、平均点が約4.7点であり、民法よりは高く刑法よりは低かった。昨年並みの受験者数で平均点が昨年より0.6点下がっていることからすると、昨年より問題が難しくなったといえよう。といっても正答率が8割以上の問題(第1問、第3問)もあり、全体として特に難易度が高いわけではなかった。また、問題5のような、薬事法距離制限規定違憲判決の正確な理解を問う難問についても、正答率は39.7%とそれほど悪くなく、総じて受験者はまずまずの結果を示しているといえよう。
 もっとも、第10問の正答率が6.4%と極端に低かった。この問題は、客観訴訟における違憲審査の可否についての判例・学説の立場を問うものであった。従来の通説は、一方で日本国憲法の採用する違憲審査制は司法権の行使に付随するものであるとしながら、司法権の行使ではないとされる客観訴訟の裁判において憲法判断をすることを特に疑問視してこなかったのであって、選択肢1が誤りである。客観訴訟における違憲審査権行使が問題として意識されるようになったのは、比較的最近のことなのである。この正答率からすればかなりの難問であったということになろう。ただ、このような誤っているものを1つ選ぶという問題は、他の選択肢は正しい記述なのであるから、選択肢をよく読みそれらの論理的なつながりを考えれば、正解に達することが決して困難ではない。2級試験ともなれば単なる憲法の知識の確認試験ではありえないのであって、憲法について考える力も問われるのだということを強調しておきたい。
 問題4の正答率も28.5%と低めであった。この問題は、憲法事件において憲法問題がどのような経緯で争われたかについての正確な理解を問うものである。『憲法判例百選』等で憲法判例を読むときには、どうしても紹介されている判旨部分だけに注目しがちだが、どのような経緯で当該憲法問題が争われているのか、憲法判断の部分が判決全体の中でどのような位置を占めるのかに注意してもらいたいものである。この問題は、出題者側のそうした憲法学習のあり方についてのメッセージが込められた知識問題である。しかし、完全な知識がなければ解けないわけではない。正解は選択肢5であるが、皇居外苑使用不許可事件最高裁判決が「念のため」判決であることを知っていれば、国家賠償請求訴訟でないことはわかるはずである。この問題も、ある程度の知識と考える力があれば正解に達することができる問題である。
 問題9も正答率が31.7%と低めであった。この正答率が低かったのは「判例に照らして正しいもの」の個数を求める問題であったからであろう。正解は4つであったが、36.8%の受験者が3つと解答しており、正解に迫っていたのであるから、それほど深刻な結果ではないと思われる。3つと解答した人の多数は、「4つも正しいものがあるはずがない」という思いこみを捨て落ち着いて考えていれば正しい答えに達したであろう。
 憲法についてのある程度正確な知識を身につけると共に憲法で考える力を育てるというのが、憲法学習の基本である。以上見てきたように、憲法の2級問題はそのような基本的な学習ができているかを問うものなのである。


■刑法 講評
 2級試験においては、「法学部を優秀な成績で卒業する程度の専門的知識および法的思考力」を身に付けているかどうかが試される。今回の試験では、刑法総論と各論についての正確な理解を試す、かなり高度な問題が出題された。ただ、問題のレベルはほぼ3級試験と同程度であり、3級問題集の刑法編をきちんと勉強してきた受験者にとっては高い得点をとることは難しくなかったはずである。平均点は10点満点で5.277点であり、昨年よりも低かった。出題する側としては、このレベルの問題であれば7点から8点程度をとってほしいと思う。ちなみに、受験者(3048人)のうち8点以上をとったのは16%であり、7点以上をとったのは26.9%であった。満点をとった人も2.2%(67人)いた。
 正答率が特に低かったのは、問題6、問題8、問題10であった。これらの問題について若干のコメントを加えておく。
 問題6は、罪数と犯罪競合の基礎知識を問うものである。選択肢1についてみると、窃盗罪の罪数は、占有侵害の数を基本とするといわれ、数人の所有物を同一人が占有している場合に、これを1個の行為で窃取したときは、1罪のみが成立するとされている。選択肢1のケースでも、すべての客体はAが占有しており、このような1個の占有を侵害した場合は、窃盗罪は1罪しか成立しない。選択肢2では、放火罪の罪数が問題とされている。放火罪は個々の財産に対する罪でもあるが、第1次的には、不特定多数人の生命財産等を危険にさらす公共危険犯である。罪数を考える場合も、何個の公共危険が発生したのかという観点で考えることになる。選択肢2のケースの場合、隣接する家屋に数分の間に連続して放火したのであるから、1個同一の公共危険が発生したにすぎないので、放火罪は1個しか成立しない。そこで、この選択肢2が誤りだということになる。選択肢3についてみると、公務執行妨害罪は暴行を手段とするので、公務執行妨害の手段としての暴行は独立して暴行罪を構成することはないが、傷害を生じさせたときは、国家法益に対する犯罪としての公務執行妨害罪のほかに、個人の身体に対する罪である傷害罪が別罪として成立する。また、1個同一の暴行が、一方で公務執行妨害行為であり、他方で傷害行為でもあるから、この2罪はいわゆる観念的競合となる。選択肢4については、窃取した財物を損壊しても、それによる所有権の侵害は、すでに窃盗罪において評価されており、新たな法益侵害性を付け加えるものではないとされ、器物損壊罪によって処罰されることはないとされる(いわゆる不可罰的ないし共罰的事後行為)。そこで、Xの行為は、窃盗ですでに評価されているので、さらに器物損壊罪で処罰されることはない。しかし、これは窃盗罪が成立するXとの関係においていえることであって、窃盗に関与せず、器物損壊のみに関与したYについては、器物損壊罪の教唆犯が成立し、それによって処罰される。このようにして問題6の正解は選択肢2ということになる。
 問題8は最も正答率が低かった。しかし、強盗罪に関する基礎知識を問う問題であり、正答率が低かったことは意外である。まず、選択肢1であるが、2項強盗罪(236条2項)が成立するためには被害者側の財産的処分行為は要件とされない(判例・通説)。したがって、誤りである。選択肢2については、これを正解とした受験者が多かったが、このケースでは強姦罪と強盗罪の併合罪となる。強盗強姦罪(241条前段)は、強盗犯人を主体とする犯罪であり、強盗犯人が強盗の機会に女性を強姦することによって成立する。したがって、選択肢2も誤りである。選択肢3は、窃盗犯人が逮捕を免れる目的で暴行を加えた場合であり事後強盗罪(238条)が成立するが、先行する窃盗が未遂に終わっているので、事後強盗罪の未遂となる(判例・通説)。したがって、この選択肢3が正解である。選択肢4については、強盗罪の実行の着手は財物奪取の手段としての暴行・脅迫が開始された段階で認められるとされているので、窃盗罪が成立するにすぎず、強盗未遂罪にはならない。したがって、選択肢4は誤りである。
 問題10も正答率が低かったが、ここでは、偽証罪における「虚偽の陳述」の意義が問題とされている。この問題をめぐっては、証人の記憶に反することをいうとする主観説と、客観的真実に反することをいうとする客観説とが対立している。設問については、主観説によれば、Xは自分の記憶に反する陳述を行ない、そのことを認識していたのであるから、虚偽の陳述を行なったことになり、偽証罪が成立する。これに対し、客観説によると、客観的真実に反する陳述をしたが、その事実が真実であると確信していたのだから、故意が阻却されることになり、過失による偽証が処罰されない以上、偽証罪は成立しないことになる。したがって、主観説によれば偽証罪は成立するが、客観説によれば偽証罪は成立しないという結論となる。正解は選択肢3である。


■商法 講評
 商法の平均点は2.665点であった。これは全科目中最も低く、予想以上に低い結果である。原因としては、(1)会社法改正に対する理解が不足していること、(2)事例的な出題において、問題の所在が明確に把握されなかったこと、(3)問題のなかに内容的にかなり難易度の高い問題が含まれていたこと、(4)出題形式として、すべての選択肢について正確に理解していないと正解できないという、選択肢の「組合わせ」や「数」を答えさせる問題が多かったことがあげられる。今回の試験で特に正解率の低かった問題3(9.5%)、問題6(7.8%)はともに選択肢の「組合わせ」や「数」を答えさせる問題であった。しかし、これらの問題も成績上位者のグループほど正解率が高いという分析結果がでており、しっかり勉強すれば正解できる問題であるといえる。
 受験者には、商法改正についての理解を深めることはもちろんのこと、概念的な勉強だけではなく、実務的な理解も欠かさず、事例的な出題にも対応できる能力を身につけることを期待する。特に、将来法律実務家等を目指す受験生にとっては、このようなことに触れる段階までの勉強が求められるであろう。また、2級試験は「法学部を優秀な成績で卒業することを証明するレベル」であるのだから、この難易度・出題形式であっても、少なくとも6割程度は正解してもらいたいというのが、出題者の考えである。
 以上の点は受験生がどのように2級試験に向けて勉強すればよいのか、または、2級試験における商法は、どのようなものであるのかということを理解するうえで参考になるのではないかと考える。
 商法は出題範囲も広く、また改正も多い法律であることを考えれば、受験生にとっては、大変な科目であろう。しかし、特に法科大学院の既修者コースへの入学を希望する者は、2級商法に十分対応できる程度の力をもつことが望ましい。また、将来企業に就職する受験者にとっても商法は多くの場面で出会うことになる法律であるのだから、頑張って勉強してほしいと切に願う。


■行政法 講評
 行政法の平均点は、5.763点であった。これは、全科目の中で一番高い(昨年と同じ)。問題がまだ少しやさしいようである。正答率は、問題1、3、4、6が70%を越した反面、60%台はなく、問題2と8が50%台で、問題5、7、10が40%台であり、問題9だけが23%と低かった。問題1から7までは3級の範囲でもあるが、問題8から10までは2級独自の範囲から出題した。
 『2級ガイドブック』と『3級問題集』を解説を含めてよく勉強してあれば、8〜9題程度の正解を得ることはそれほど難しくなかったと思われる。全般的に、正解となる選択肢文の正誤の見極めが容易であれば、他の選択肢の正誤判断がかなり難しくても正解率は高かった。
 分野別にみると、行政行為論その他の総論分野は比較的よく出来ているが、国家賠償よりあとの部分、特に2級独自の分野になると点数が低かった。総論分野でも問題5のみは40%台の正解率だったが、これは情報公開法の条文の知識が関係している。国家賠償よりあとの部分は、総じて条文の細かい知識が問われやすい。つまり、行政法の基本原理等から判断できるものは別として、条文の知識が決め手になるような問題についてはまだ全般的に学習が不足している印象を受けた。行政争訟法や各論は条文数が多く、何をどこまで覚えればよいのか見当をつけにくいのは事実だが、判例や学説でしばしば問題になる点や教科書で重点を置いて説明している点などはしっかりマスターしておきたい。


■民事訴訟法 講評
 民事訴訟法の平均点は4.198点であり、これは商法、民法、労働法に次いで下から4番目であった。これだけをみると、やや難しい試験であったといえるかもしれない。しかし、合格の目安となる正答率6割(正解6問)以上の受験者は、2990人中813人(27.2%)を数えており、この点をとらえれば、難易度は適正であったといえるであろう(なお、全問正解者は全体の0.4%の12人であった)。5問以下しか正解できなかった諸君には奮起を期待したい。
 10問中最も正答率が高かったのは問題1であり(78.13%)、それに次ぐのは問題2であった(68.13%)。問題1は口頭弁論の公開に関する問題であり、一般教養的な色彩が濃く、訴訟行為に対する表見法理の適用に関する問題2も、民法の知識があれば正解に到達し得るものであった。これに対して、他の問題の正答率はいずれも50%を切っており、受験者の多くが民事訴訟法固有の問題について習熟が不十分であることを伺わせる。
 最も正答率が低かったのは問題10であり(13.78%)、それに次ぐのが問題6であった(18.93%)。問題10は控訴の細かい問題点に立ち入った設問であるが、大学の講義でも上訴には十分な時間が割けないことが多いこと、司法試験の論文試験においても上訴の問題がほとんどでないことなどが影響していると考えられる。これに対して、問題6は、4つの文のうち正しいものの数を問う問題であるうえ、正しい文は「なし」が正解であったことが、正答率の低さに影響しているものと考えられる。
 今回、好成績をあげられなかった諸君は、『2級ガイドブック』や『3級問題集』だけではなく、民事訴訟法の教科書を何度も通読して、幅広く体系だった知識を身につけることをお薦めする。


■刑事訴訟法 講評
 刑事訴訟法の受験者数は約2000人で、平均点は5.331点であった。試験科目の中では、民事系の科目に比べて,いくらか易しかったのではないかと思われる。6点をとった受験者が全体の約47%であった。
 出題内容は、前回と同様に、捜査・公訴提起・公判手続・証拠法・裁判という刑事手続の各段階における、基本的で重要な事項についての基礎的な知識(必ず大学の講義で触れられる基本判例についての知識も含む)と理解を問うものであったから、ほとんどの問題は、基本的な教科書と刑事訴訟法の関連条文を読み講義をまじめに聴講していれば、容易に解答できるレベルのものである。司法試験受験を目指す者にとっては、全問正解できなければ勉強が足りないというべきであろう。
 今回の問題の中で、他に比べて正答率が著しく低かった(9.0%)のは、問題4であった。確かに選択肢に掲げられた制度・条文と接見指定要件たる「捜査のため必要があるとき」の解釈との論理的な結びつきについて、この設問のような観点から詳しく説明した教科書の記述は乏しいので、他の問題に比べて、かなり難度が高かったものと思われる。問題4の出題意図・趣旨は以下のとおりである。
 現行法制度では、勾留中の被疑者と弁護人等以外の者との接見について、罪証隠滅の恐れを理由にそれを禁止する権限は、裁判官のみに与えられている。これと対比すれば、弁護人等との接見について、裁判官ではなく、利害対立の一方の当事者である捜査機関に接見指定権を定める法39条の権限は、広く罪証隠滅のおそれではなく、より限定された事情のある場合にしか行使を許されないとの解釈が導かれ得る。この意味において(2)は、Bの見解の論拠にあげられる。これに対して、(1)は、接見指定が許されるのは、罪証隠滅の防止という勾留の目的を貫徹するためであると解するならば、Bではなく、むしろAの見解の論拠となる。(3)は、Aの見解とBの見解の対立とは直接の関係をもたない。(4)も、Aの見解とBの見解との対立において、「捜査のため必要があるとき」をAの見解がいう場合にまで広げることなく、Bの見解がいう場合に限定する解釈を導く論拠とはならない。


■労働法 講評
 労働法の受験者総数は1047名であり、法学基礎論と基本六法以外では、昨年に続いて最も受験者数が多かった。労働法の重要性が正当に認識された結果であり、大変喜ばしい傾向であるといえよう。今後とも同様の傾向が続くことを期待したい。
 本年の結果をみると、昨年同様満点取得者はおらず、平均点は3.95点で、昨年より0.2ポイント低下した。正答率をみると、25%以下の問題は問題1(18.9%)と問題8(20.3%)の2問である。前者は解雇について、制度と判例の知識を問うたものであるが、いわゆる整理解雇の4要件が、最高裁の確立した判例であると誤解した答案が過半数にのぼった。実際には、整理解雇には4要件が必要であると明確に述べた最高裁判決は存在しないが、高裁までの数多くの裁判例が繰り返し4要件説を表明しているので混同したものであろう。後者については、労災保険法の基本的な知識が十分でない実情が反映されたものといえる。多くの受験生が選択肢3もしくは4を選んでおり(あわせて70%以上がどちらかを正解としている)、せめて法の基本条文と制度の基本は理解するよう要望したい。
 逆に正答率の高かったのは問題10で(83.7%)、育児・介護休業法に対する関心の高さがうかがえるといえよう。しかし、この他では問題5の正答率が64.2%で、他はすべて50%以下の正答率であった。
 2級の場合には3級と異なり、一定の応用力を要請される。細かな条文や下級審判決の動向まで性格に把握する必要は毛頭ないが、労基法や労組法のみならず、均等法、労災保険法、職業安定法など重要法令の内容については最低限の理解が必要であるし、少なくとも最高裁判決の動向には、一応の注意を払っておくことが不可欠であることを強調しておきたい。


■倒産法・執行法 講評
 倒産法・執行法の平均点は4.373点であり、他の科目と比較して、中程度の難易度であったということができる。合格の目安となる正答率6割(正解6問)以上の受験者は、332人中88人(26.5%)を数えており、この点をとらえても、難易度は適正であったといえるであろう(なお、全問正解者は全体の0.3%の1人であった)。5問以下しか正解できなかった受験者には奮起を期待したい。
 今回の試験において特徴的なことは、正答率が65%を超える問題が4問(問題1、4、8、10)あるのに対して、その他の6問の正答率は、最高でも40.06%(問題9)、最低は15.96%(問題2)と、問題による出来不出来がはっきりと分かれた点である。ここから、今回受験者の多くに共通する特徴として、試験に出そうな典型的な問題には強いが、やや周辺的な問題点についての知識が十分ではなかったり、あるいは、掘り下げた問題を考え抜く力が弱い、ということを読み取ることができる。
 今回の受験者の弱点を明らかにしてくれた典型的な問題は、固定主義と膨張主義の特質を問う問題2であり、既に述べたように正答率は15.96%しかなかった。固定主義と膨張主義は、倒産処理手続に服する債務者財産に関する最も基本的な問題点であるにもかかわらず、やや考えさせる問題になっているために正答率が低くなったと考えられる。これに対して、否認権に関する判例の知識を問う問題4は、典型的な論点であったため、正答率が73.80%という最高の正答率であった。
 倒産法・執行法は、範囲が広いため、全般的な知識を充実させることがなかなか難しい分野であるが、あまり詳しいものでなくてもよいから、基本的な教科書を何度も通読することで実力を高めていただきたい。


■独占禁止法 講評
 独占禁止法の受験者合計は228名である。平均点は5.702点(10点満点)であり、他の科目と比べると高いほうであった。10点満点が1名いる。得点ごとの人数をみると、6点を頂点として、綺麗な分布をなしている。
 最も正答率が低かったのは、日本航空と日本エアシステムの事業統合に関する「問題7」であって、9.65%であったが、試験事務局が作成した判定値によれば、奇問というわけではまったくなかったようである(つまり、誤答がまんべんなくばらついており、特定の誤選択肢に解答が集中していない)。両者の事業統合が、「新規参入者への羽田空港発着枠の返上」などを条件として認められたことは、新聞などでも大きく報じられたところであって、公取委の発表文をチェックしていなくとも、正答できたはずの問題である。
 正答率が低かった他の問題は、「不当な取引制限」に関する「問題2」、「審査・審判・訴訟」に関する「問題9」、再販売価格拘束に関する「問題3」である(いずれも30%台)。これらも、試験事務局の判定値では奇問とはされておらず、むしろ他の問題が易しかった、といえるようである。「問題2」については、選択肢2が正答であるからこそ、いわゆる「官製談合」における官公庁の発注担当者への責任追及が現行法では最高で「幇助罪」にとどまるため、平成14年に「入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律」が制定されたものと思われる。


■知的財産法 講評
 知的財産法の受験者は271人で、全体の受験者が増える中で昨年(428人)に比べると減少したが、選択科目B群の科目の中では、労働法、倒産法・執行法に続く受験者数であった。平均点は5.892点(10点満点)で、昨年度の平均点(4.45点)に比べるとやや高くなっている。選択科目B群の科目の平均点は3.95〜5.892点なので、これらの科目の中では最も高いものとなっているが、基礎的な理解を問うという出題の意図からすると、適切なものであったのではないかと思われる。正答率が50%以下だったのは、問題4の正答率の41.7%、問題7の正答率の42.1%、問題10の正答率の48.3%の3問で、40%以下の正答率の問は無かった。昨年、正答率が50%以下の問題が6問、40%以下の問題が4問あったのと比べると、正答率が向上し、不正解肢の選択者の方が正解肢の選択者より多かった問題がなくなり、難易度が適切なものとなったのではないかと思われる。
 問題4では、選択肢1を選択した人が17%、選択肢2を選択した人が15.5%といた。いずれも、著作権の基礎的な事項についての単純な出題であり、理解をしていて欲しかった。選択肢4を選択した人は19.9%いたが、公衆送信権に関する例外の取扱に関するものであり、やや難しかったかもしれない。問題7では、選択肢3を選択した人が35.4%もあり、10問中最も選択の多い不正解の選択肢であったが、特許の効力は輸出には及ばないという基本的な事項についての質問であり、理解をしていて欲しかった。問題10では選択肢1を選択した人が24%いたが、商標権の効力に関する基礎的な事項についての単純な出題であり、理解をしていて欲しかった。選択肢2を選択した人が15.9%であった。商標の先使用権の要件に関する質問であり、やや難しかったかもしれない。その他、不正解の選択肢を選択した人が20%を越えたのは、問題2の選択肢3の29.5%、問題3の選択肢5の21.4%であった。問題2の選択肢3は、現在改正が議論されている不正競争防止法の営業秘密に関する刑罰規定の問いであり、やや紛らわしかったかもしれない。問題3の選択肢5は、基礎的な問題であるものの、写真の著作権 に関する問題であり、やや難しかったのかもしれない。


■租税法 講評
 租税法の平均点は4.31点であった。設問ごとの正答率は、問題5が約20%、問題4と問題8と問題9が約25%、問題10が約35%、問題3と問題6と問題7が約50%、問題1が約65%、問題2が約85%であった。このように、比較的難しい問題とやさしい問題のばらつきはあったものの、全体としてみると、難易度はほぼ適切であったのではないかと思われる。また、かなり難しい問題(問題5、問題4、問題8)とかなりやさしい問題(問題1、問題2)の両方が混在していたためか、0点、1点、8点、9点、10点の者が、ほぼ2%ずつしかおらず、残りは、2点から7点の間に集中する結果となった。ちなみに、2点から7点の間の者の比率は、2点が約15%、3点が約25%、4点と5点が約15%、6点と7点が約10%であった。このようにいくつも難しい問題があったにもかかわらず、全問正解者がいたのは立派であった。
 昨年も、原理原則について問うたものではなく、現行の取扱いについて問うたものである問題(昨年の問題5)について、正答率が低かったが、今年も、同様の傾向が見受けられる(問題5、問題4、問題8)。問題2はやさしすぎたかもしれないが、基本的なものであり、よく理解していただきたい。
 以上を振り返ると、本年も、問題の作成はほぼ適切に行なわれたのではないかと思われる。昨年の繰り返しになるが、今後も、基本的な理論や取扱いについて十分に理解しているかどうかという視点から、問題作成にあたりたい。課税はすべての経済取引に対してなんらかのかたちでかならず関係してくるものである。したがって、実社会においては、いかなる職業につくにせよ、課税問題を知らないですますわけにはいかないという点を認識していただければ幸いである。


■国際取引法 講評
 国際取引法の平均点は4.52点で問題が全般的に難しかったようである。特に国際的な製造物責任に関する問題9とセーフガードに関する問題6の出来が悪かった。Force Majeureに関する 問題8は、やさしすぎたか、と思ったがやはり意外に成績が悪かった。Force Majeureと不可抗力あるいは責めに帰すべからざる事由、impossibility of performance, frustrationのそれぞれの法理の関係は、国際取引を行う上での基礎的知識であろう。WTOの紛争解決問題もあまり正答率は高くなかった。国際取引法は出題範囲が広いので、どうしても得意不得意の差が大きくばらつきがでるのかもしれない。国際私法関係は不法行為の準拠法に関する問題3を除いては、概してよく出来ていた。


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