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いま、なぜ官業を増やそうとするのか
法科大学院適性試験の実施主体をめぐって

財団法人日弁連法務研究財団 理事長新堂 幸司
I はじめに

 法科大学院の発足も、予定された2004年4月まで、あと1年半となった。それまでに決めなければならない事項もたくさん残っており、文部科学省(以下、「文科省」という。)をはじめ、制度作りの関係者は、大変であろう。法科大学院を作ろうという各大学の関係者も、入れ物作りから人事体制の整備など、ひとしお暑い夏を送られたことであろう。
 こうした、せわしい状況の中で、一つ気にかかる問題がある。それは統一的適性試験の実施主体をめぐる風聞である。
 2004年4月に法科大学院の学生を受け入れるに当たって、少なくとも、半年前に適性試験が実施され、その結果が受験生にも分かっていないと各自の進路の決定に困るだろうし、各大学院側も、各自の入学者選抜に適性試験の結果を利用することが危ぶまれるだろう。いずれにしても、遅くも2003年の夏から秋に統一適性試験が行われることが必要であることは明らかである。そのために、問題作成の方法・基準の確立、相当数の問題の作成、それらが適切な問題であるかどうかの検証、出題問題の決定、決定した出題問題のモニタリング(実際に何人かに受験してもらって問題ないかどうかを確かめる)等の作業をじっくりと行うべきであることを考えると、現在すでに、本番の適性試験の問題作成作業が進行していなければならない時期にある。
 ところが、噂によると、文科省は、この適性試験を大学入試センターにやらせたいという強い意向をもち、法科大学院協会準備会なるものの立ち上げを促し、準備会の中に直ちに世話人会を設け、その下に法科大学院入試検討委員会、適性試験運営委員会なる組織を作り、そこで、適性試験の業務を誰に委託するかを検討させ、結果的には、大学入試センターに委託する方向に準備会全体を動かそうとしているとの噂である。まさか文科省がそのような姑息なことを本当に考えているとは信じられないが、昨今の司法改革をめぐる各省庁の権益確保にこだわる縦割りの構えを見ると、あり得ない話ではないな、と懸念されるところである。
 そこで、ここでは、大学入試センターがこの適性試験の実施主体になれるのかどうかについて、法的視点から検討して、ひろく受験生を含めた一般の方々にご理解いただくとともに、とくに大学人の注意を喚起したい。

II適性試験の準備状況

 さて法的検討に入る前に、適性試験の準備状況について正確に認識しておく必要がある。
 適性試験の調査研究については、2000年の12月から、財団法人日弁連法務研究財団がアメリカのLSATについての調査を進め、その調査結果を踏まえて、昨年6月には、「法科大学院の入試のあり方」と題してシンポジウムを行い、その成果を公刊すると共に(日弁連法務研究財団編(JLF叢書VOL 2)『シンポジウム法科大学院の入試のあり方−LSATの調査研究を踏まえて−』)、第2次調査研究として、適性試験実施へ向けての作題作業、LSAC(LSAT実施団体)の責任者を招いた勉強会、本年4月のプレ模擬テストの実施、その結果の分析を踏まえた、本年7月28日の全国的規模での第1回模擬テストの実施等を経て、現在そのデータの分析を終え、11月24日の第2回全国模擬テストに向け,さらには、来年秋に予定する本番の適性試験の実施に向け、鋭意準備中である。他方、大学入試センターは、何の準備もしていない。これが現状である。かりに、センター自身が準備をしているとしたら、後述するように、少なくとも現行法上は脱法行為をしていることになる。
 もっとも、東大の伊藤眞教授を代表とした、自主的研究グループによる模擬テストの内容の発表があり(ジュリスト1227号118頁以下)、大学入試センターが適性試験の実施主体となるというときには、この研究の成果をそっくり受け継ぐというのかもしれない。以上のような事情を前提にして、法的問題を検討してみたい。
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(2002.9.30発行)


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