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新年のご挨拶
弁護士の質を問う時代がやってくる
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財団法人日弁連法務研究財団
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理事長
新堂 幸司 |
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昨年3月、全国の法科大学院から、第1回の修了者2176名(修了は2176人、修了の上、出願は2125人)が一斉に巣立った。彼らは、5月に新司法試験を受験し、1009名が合格者となった。わが財団は、この修了者達の入学試験時から、入学選考のための全国統一適性試験を実施し(2003年8月)、以後毎年、これを実施してきている。法科大学院では、少人数で双方向・多方向の授業を行うべきだとされているが、この新しい教え方についても、調査研究を重ねてきた。さらに、法科大学院の第三者評価(認証評価)事業においても、トライアル評価を積み上げ、いよいよ本番に備えた評価体制を整えることができた。このように、わが財団は、法科大学院の創設から運営につき、多面的に支援してきた。これからも、協力を惜しまないつもりである。
私自身も、法科大学院で民事訴訟法の授業を、ほぼ3年間受けもった。教師生活は45年を越えるが、法科大学院の授業では、極めて新鮮な体験をした。
第一に、研究者と実務家との交流が、単なるパーティ・レベルでなく、教育の現場で、競い合い、かつ、協力し合う体制が生まれた。そこに、理論と実務を架橋する新しいタイプの法学教育・法学研究を生む土壌がつくられつつあることを実感した。
第二に、学生の積極的な勉学態度に接し得た。予習する授業などというものは、かつての法学部には、演習以外にはまずなかった。必修の基本科目において、終始、具体的事件や判例の勉強のなかで、事案の後ろに見え隠れする当事者らの利害得失、理性、情念、意地、怨念などを、院生各自に読み取らせることなどは、法学部の大教室での授業では考えられなかった。
第三に、教師として、授業の在り方を模索する前提として、何をおいても、あるべき法曹像とはいかなるものか、そして、そのための養成教育はいかにあるべきかを、常に問い続けざるを得なかった。授業において、単なる法知識の習得だけでなく、法律的なものの考え方を身につけさせるには、ここで、また、あそこで、どう教えたらよいのか。そして同時に、法律的思考が陥りやすい危険 — 杓子定規的、画一的な見方、あるいは制度を通してしか人間を見なくなる危険 — を克服するために、法制度の、また個々の事件の奥に潜む生身の人間を洞察する力、そして、事件の落としどころを直感できる豊かな感性を養うには、いつどこで、どういう問いかけをすべきか、いつも迷った。授業の準備において、教室での実践において、さらには答案から見る授業成果の検証において、毎日が悩みの連続であり、試行錯誤の道のりだった。
いま、第1回の修了生が法曹界に入ろうとしている。そのまぶしいまでの後姿を見送りながら、私の、そしてわれわれの教育は、これでまずまずだったのか。どこが足りなかったのか。これからは、彼らの生きざまを通して、われわれ教師もまた採点されていくのかと思うと、怖いようでもあり、また教師に与えられる密かな楽しみでもある。それは、明日への励みでもある。
これまで「法曹の数を大量に増やせば、質が落ちる」といわれてきた。蓋然性の高い経験則として多用された。弁護士増に対する抵抗の理論でもあった。
しかし、本当に、数が増えれば質が落ちるのか。これから誕生する法曹の将来が、この経験則を裏書きすることになるのか、それとも単なるプロパガンダであったことを証明するのだろうか。まさに、新しく養成される弁護士の質につき、従前の弁護士との比較で、経年的な長期にわたる調査研究が待望される所以である。
それにしても、一体、弁護士の「質」とは、どのようにして測ったらよいのか。依頼者、さらには潜在的な利用者 — 市民、企業、官庁など社会全体の構成員?から信頼され親しまれる度合いがその基本軸になるであろう。しかし、調査事項を具体的項目に落とし込む作業では、多面的な尺度が、総合的に準備される必要があろう。日弁連(日本弁護士連合会)の中でも何度も議論されたが、その検証方法については、いつも結論を得られなかったと聞く。それでも、法科大学院の成功・不成功を論じるには、実証的データを集め分析する必要がある。適性試験・認証評価の妥当性を吟味しこれらを改善していくためにも、これらの調査研究が不可欠である。そこで、わが財団は、日弁連からの依頼を受け、昨年暮れから、弁護士の質をどのように測ることができるかについて、研究を始めた。その成果がまとめられ、早期に、経年的な信頼できる実態調査自体が始められることを祈る。
さらに、昨年始められたわが財団の調査研究には、民事訴訟制度の利用者についての5年に一度の意識調査、また弁護士階層化の実態調査などがある。いずれも、今般の司法制度改革の当否を将来にわたって検証しようとする意欲的なもので、わが財団にふさわしい研究課題であり、その成果を大いに期待している。