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■ 次世代法曹教育の調査研究とフォーラム

財団では、目前に迫った21世紀の法曹教育に求められるものは何かについて、その研究に着手することが、日弁連の設立した財団の使命のひとつであると考え、本年3月から「次世代法曹教育の調査研究とフォーラム」を開催している。合計5回を予定しているうち、本年5月末までで、3回を終えたので、座長の1人である東京大学法学部の高橋宏志教授に感想をうかがった。

次世代法曹教育フォーラムに出席して
◎ 高橋 宏志

高橋宏志氏

 次世代の法律家の養成はいかにあるべきか、をめぐって法務研究財団で討議(フォーラム)を行なっている。司法制度改革審議会に象徴される昨今の動きの中で、弁護士、学者、司法書士、税理士、その他幅広く法律家を結集している当財団が、この問題につき発言しなくてよいのかという声が会員から挙がり、開催に至ったものと聞いている。

 フォーラムで討議に参加する委員は、弁護士10人、裁判官1名、大学人14人、司法書士1人、官庁関係2名、当財団3名から成っている。すでに3回の会合が持たれたが(議事録を財団のホームページに掲載中)、あと2回開催する予定である。

 さて、この種の問題の討議は、ある種の運動論的・政治論的議論に陥りやすい。そこで、当フォーラムは、馬橋座長の発案で、そもそも次世代の法律家のあるべき姿は何か、現在の養成システムのどこにどのような問題があるかをまず論ずることにした。共通の理解を前提に討議するためであるが、むろん完璧を期すと何回会合を開いても足りないので、ある程度の共通の土俵作りで満足せざるを得ない。


大学人と司法研修所教官経験者との認識のずれが明確化(第1回)

 3月22日に開かれた第1回は、委員がお互いを知り合う顔合わせを兼ねて、次世代の法律家のあるべき姿は何かの自由な意見交換に当てられた。結果として、参加委員全員がなんらかの発言をし、相互の理解は深まったように思われる。しかし、内容面では、どちらかと言えば現行の司法研修所修了者に照準を合わせ、そこが次世代でもあるべき姿だと捉える見解と、次世代の法律家はそれでは足りず更に上の質を目指すべきだという見解に分かれたようである。ともあれ、第1回の大きな収穫は、大学人が現在の司法試験合格者が暗記に走り法的思考能力が劣ると批判するのに対して、司法研修所教官経験者側から司法研修所の教育によってその程度のマイナスは十分に矯正されている、司法研修所修了者の質が劣化していることはない、との反論があったことであろう。大学人側の認識と司法研修所側の認識のずれが、明確になったのである。関連して、司法研修所教官経験者の一部から、大学は司法試験予備校に教育において負けたのである、その点を大学人は見ようとしないし認めようとしない、そこに大きな問題があるという指摘もなされ、議論は白熱した。第1回は、相互の親睦を深めるため、地下の桂で親睦会を開き、盛会であった。

出席者の語る司法試験予備校の実態(第2回)

 4月20日の第2回は、大学での法学教育の問題点を探ることに当てられたが、司法試験予備校の実態を探ることから始められた。最近、司法研修所を修了した、ということは数年前に予備校を利用して司法試験に合格した若手弁護士2名から自己の予備校体験談、および他の予備校の探察談が語られた。大学人は予備校を常に批判するけれども、どれだけ予備校の実態を見て批判しているのか危ういところがあるとの感想も付け加えられた。弁護士委員の一部からは、今や日本では予備校でこそ体系的法学教育がなされている、大学においてではない、という強い声も飛び出した。若手弁護士へのアンケート結果でも、大学教育は役に立たなかったという割合の方が高いという大学人にはショッキングな報告もなされた。公平に見て、大学人からの反論は十分ではなかったというべきであろう。

司法研修所の本当の問題点は?(第3回)

 5月24日の第3回のフォーラムは、大学の法学教育の問題点の補論と、司法研修所での修習に問題点があるかに向けられた。前半では、大学側委員の一人から、大学人は真剣に反省しなければならない、予備校に教えに行く大学教師も少なくないが、そういう者が大学教師としては予備校批判を口にする、これは奇妙ではないか、という発言があったのが印象深い。司法研修所に問題点があるかの本題では、スキル教育に偏重している、法哲学や法社会学を教えないのはおかしいという批判が弁護士委員からなされたが、裁判官委員その他から、司法研修所は司法試験合格後の修習であるからスキル教育でよいとの反論があり、大学人委員の多くもそちらに同調した。続けて、本当の司法研修所の問題点は、裁判官のリクルートの道具となり「官僚裁判官の養成場と化していると主張されていること」ではないか、それを討議しなければフォーラムの意味がないのではないかという発言があり、そこに討議が向けられることになったが、残念ながら、裁判官リクルート批判を強度に展開する委員が少なく、やや不完全燃焼の感が残ったようにも思われる。
 さて、現状についての相互認識の開陳は終わり、第4回、第5回は、いよいよ近未来のあるべき法律家養成に焦点が向けられる。法科大学院の構想、実務教育のあり方、司法研修所の存置等が、直接の話題となるであろう。これまでの3回でよい意味での本音がかなり出されたので、深みのある討議がなされると期待しているところである。


財団では、3月から開催している「次世代法曹教育の調査研究とフォーラム」について、4月18日付で記者会見を行った。記者会見での財団側の発表は以下のとおり。

次世代法曹教育の調査研究とフォーラムについて
◎ 日弁連法務研究財団

1.日弁連法務研究財団

 日弁連法務研究財団は、平成10年4月に日本弁護士連合会からの1億円の基金をもつて設立された財団です。会員は弁護士のみならず、司法書士、弁理士、公認会計士、税理士、それに企業法務に従事する人などを含め広く法律実務に従事する者および学者からなり、現在会員は3000人ほどです。
  これまで、広く研修、研究を行うのみならず、印刷物、ホームページによる情報提供やメーリングリストによる会員間の議論を行っています。例えば研修においては、財団の特色を生かし、それぞれの業務において生ずる責任、『専門家責任』についてのパネルディスカッションを行ったり、研究においても、弁護士、裁判官、学者を含めて、『21世紀の民亊訴訟』についての検討がなされています。現在、財団において行っている研究は約15に及んでいます。

2.この調査とフォーラムを行うに至った理由

 近時、司法制度の改革が叫ばれ、司法制度改革審議会のみならず、政界、財界、民間においても議論がされています。こうしたなかで、所謂、ロースクール(法科大学院)問題が議論されるようになり、当財団においても昨年暮頃より、この問題を研究しようということになりました。
  ただ、ロースクールが良いか悪いかを判断する前に、我々は、まず、現在行われている法曹教育の現状を十分に把握しているのか、大学教育のどこに問題があるのか、司法試験予備校の弊害を言うものの、何故学生が大学の授業よりも予備校にひかれるのか、司法研修所は裁判官僚の養成に主眼を置いているとの批判があるが、司法研修所での教材の選定、教官の合議、そして講義や起案の添削がどの様にされているかの調査、検討をしたことがあるであろうか。そして、そもそもこれからの法曹教育に求められる『法曹の資質』とは何なのか。
  当財団としては、これらの点を十分に議論して初めて、21世紀に向かっての法曹教育の具体的内容とそれをどこが担うのが相応しいかを見出せるものと考えるに至りました。

3.フォーラムのテーマ

 財団としては、このような立場から、次世代法曹教育の調査研究を行うこととし、その一環として、これまで法曹教育に携わり、また意見を発表したりしている方々に集まっていただき、フォーラムを開催することになりました。法曹養成については学者や各大学、それに一部の弁護士会がそれぞれの立場から意見を発表していますが、このフォーラムにはそれらの関係者のみならず、これまで法曹養成を行ってきた司法研修所の教育の実情を知るために教官経験者にも出席を求め、また裁判所、法務省それに文部省の担当者にも委員として参加してもらい、これらの人々が一堂に会し議論をおこなうことが必要であり、またこのような議論こそ、これまでどこにおいてもなされてなかった本フォーラムの特徴であることになります。
  そのため、フォーラムのテーマも

@実務家として第一歩を踏み出す法曹が持つべき資質とはどんなものか。
Aこれまでの法曹教育の実情と、その反省すべき点、足りなかった点。
大学、大学院、大学における司法試験教育、予備校、事前研修、研修所(前期)、実務修習、研修所(後期)事後研修など
B これから行うべき教育内容と、その教科を、どこで、誰が、どの様にして教育するか。

の三つとしました。
  またその回数は、3月22日を第1回とし、7月まで4ヶ月で5回を予定しています。

4.フォーラムの委員と事務局員

 フォーラムに参加する委員については、これまでにロースクール問題などで意見を発表している大学、この問題につき意見を発表している学者や弁護士会、弁護士、研修所教官経験者、それに裁判官、法務省、文部省にも参加を呼びかけました。その結果、前号の通りの委員の方々の参加を得ることができました。なおこの委員の方々は、それぞれの大学や、官庁から推薦はされているものの、それに拘束されること無く自由に意見を述べていただくことになっています。フォーラムの座長は、東京大学の高橋宏志教授(民亊訴訟法)と財団の馬橋隆紀(元司法研修所民亊弁護教官、日弁連司法修習副委員長、新規登録弁護士研修センター委員)が担当しています。
  また、このフォーラムついては迅速な事務処理が必要とされたため、日弁連からの事務担当者3名、それに財団に所属する弁護士、司法書士、弁理士など約15名が事務局を担当しています。

5.資料の事前配布とメーリングリストの活用

 ところで、このフォーラムの委員は、それぞれ各地で仕事をしており、またフォーラムの回数、それに発言時間も限られてしまう為、委員には事前に必要な資料を事務局に送ってもらい、これを事務局で製本し、少なくともフォーラムの一週間前には、これを全委員に送付しています。また、委員の意見については、予めこの為に設けたメーリングリストで発表してもらい、そのなかでお互いに議論を煮詰めることにより、フォーラム当日を有効に使うことに心がけています。

6.会議録の公表

 フォーラムの内容は、録音反訳の後、委員の校正を経て公開されることになっています。公開の方法は、会議録として印刷し希望者に頒布するとともに、会員のメーリングリストや財団のホームページによることにしています。

7.第1回フォーラムの様子

 第1回のフォーラムは3月22日午後6時から東京霞が関の弁護士会館で行われました。出席委員は、海外出張、病気の3名を除き27名、オブザーバーとして、裁判官、弁護士、大学関係者など8名が参列しました。この第1回のフォーラムのテーマは『実務家として第一歩を踏み出す法曹が持つべき資質とはどんなものか』ということでしたが、お互い顔合わせということもあり、全委員がそれぞれの考え方を述べる留まり、激しい論争が成されるまでには至らなかったものの、意見の端々には、各自の立場の違いが現れ、法曹教育に携わる者が一堂に会して意見を交換するとのフォーラムのねらいは意味のあるものと確信しました。
  なお、フォーラムは2時間半にわたり行われましたが、終了後、簡単な懇親会が行われ、その場でも1時間半、忌憚の無い意見の交換が行われました。

8.第2回以降のフォーラムの予定

 第2回のフォーラムは4月20日、第3回は5月24日、第4回は6月22日、第5回は7月14日を予定しています。今度の第2回のフォーラムでは、第2のテーマの内、大学教育の現状と問題点、それに批判の多い予備校についての実情、そして時間があれば、司法研修所の教育の内容にまで入っていきたいと考えています。ここではこれまで学者や実務家がお互い知る事のできなかった従来の法曹教育の姿が明らかになるものと期待しています。
  第3回のフォーラムでは、研修所の教育についての検討を行い、第4回、5回のフォーラムで、これまでの議論を踏まえ、最後のテーマである『これから行うべき教育内容と、その教科を、どこで、誰がどの様にして教育するか』につき議論し、次世代法曹教育についての具体的提案をしたいと考えています。
  ご承知のように、司法制度改革審議会の動きは速く、この法曹養成制度についても、審議会としては第三者機関に検討を依頼するとの方向です。このため財団に対しては、早期に結論を出すべきとの意見も寄せられています。しかしながら、今回当財団の呼びかけに、法曹教育に関与するこれだけの人々が多方面から委員として集まり、積極的な議論をしていただいている以上、しばらくはこの充実した議論を見守り、それを踏まえて方向性を見出すことが、21世紀の法曹教育という、将来の日本の司法の根幹をなす問題を考えるには必要だと考えております。

(2000.6.30発行)


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