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「我が国の法律事務所におけるパラリーガルの育成と有効活用について」
●パラリーガル研究会
「パラリーガル研究会」は今回の研究を実施するに際して立ち上げた研究会であり、森本敦司(横浜創英短期大学情報処理学科助教授)を主任研究員として、小川義龍(東京弁護士会弁護士)、岡田好弘(紀尾井町綜合法律事務所事務職員)、Keiko Harman(フリーランスパラリーガル及び翻訳・通訳業)、津田富士夫(淀屋橋法律事務所事務職員)、佐藤まゆみ(小川綜合法律事務所事務職員)、高橋真澄(三羽・山法律事務所事務職員)、横店恵美(第一中央法律事務所事務職員)より構成される。なお、本稿は各研究員が分担を決め執筆し、その最終的なまとめについては森本が行った。


はじめに 研究の意義・目的
 本研究は、我が国の法律事務所において、パラリーガルを効果的に育成・活用し、法律事務所の利用者に対し、合理的な価格で高水準の法的サービスを提供する途を探ろうという試みである。現在、我が国の司法制度改革は、大きく進展しつつあり、今後、相当数の弁護士人口の増加が見込まれる。その背景には、弁護士業界にも競争原理を導入し、利用者にとってより利用しやすい弁護士・法律事務所を実現しようとの考え方がある。
 しかし、弁護士人口の増加以前に、現在ある資源を最大限に活用し、法律事務処理を効率化するとの観点からは「パラリーガルの活用」が不可欠であると思われる。
 パラリーガルは1960年代にアメリカで発展した専門職であるが、パラリーガルに手続的・定型的な業務を任せることにより、弁護士に高度な法的判断を伴う業務に専念させることを可能とした。パラリーガルに任せる業務は事務所規模によって異なり、小規模事務所には業務全般にわたる幅広い知識と、ときには秘書的な仕事も求められることになり、大規模事務所におけるパラリーガルには、より専門化された知識と技能が求められよう。
 今回の研究では、わが国における「パラリーガル」の現状を理解し、その育成と有効な活用を、将来的には能力認定の構想も踏まえながら検討することとした。
 本研究は2000年11月より始まり、最終的には詳細な報告書を提出する予定ではあるが、現時点において以下に示すような実態調査、能力認定試験の枠組みの検討などを行っているので、ここに中間報告としてその経過を発表する。

1 実態調査報告

(1)日本のヒヤリング調査報告
1)弁護士会
 全国弁護士会の法律事務職員研修の現状は別表の全国アンケート結果のとおりである。年間2、3回実施の単位会の中には、マニュアルは作成していないが、大阪弁護士会発行『法律事務の手引き』、東京弁護士会法律事務職員研修テキスト、裁判所作成のテキスト等を利用しているところもある。この他、弁護士会主催の研修が充実していない地域では近隣の弁護士会主催の法律事務職員研修への受講斡旋の希望があり、実現しているようである。
 年間8回以上実施している大都市単位会では、研修内容の更なる充実のため、ベテラン事務職員を講師としたり、手続法だけでなく、実体法の研修、また、初級・中級のレベル分け研修が始まりつつある。上記単位会同様、事務職員研修については経験交流もなく情報も得られていない状態で、現在、ブロック単位では交流の話も出ている。
 また、全国で唯一大阪では弁護士協同組合が事務職員研修に積極的に取り組んでいる。
2)教育機関
 大阪では、数年前より弁護士の支援による、特に日本に多い小規模事務所に対応する秘書業務もこなすパラリーガル養成講座が、ある専門学校で開講されている。その内容は、実際に書式を書かせたりする実践的なもので、オプショナルとしてパソコン研修(ワープロ、表計算)もある。
 また、大阪の別の専門学校では2001年より、法律事務職員及びパラリーガル養成講座を開講している。講師は法律事務職員養成講座の1講座以外はほとんど弁護士で、こちらはどちらかというと法律基礎を重視するものである。これから就職する学生等を対象としているため、職業紹介業もあわせて実施している。
 これらの専門学校におけるパラリーガル養成については、現職の養成というより、これから就職する者の養成であり、今後、現職パラリーガルの養成講座についても需要はあると思われるので、その構築について考えていくことが求められていると思われる。
 また、京都のある大学においては、2001年度からパラリーガル養成講座(法律事務実務講座及び法律秘書実務講座)が弁護士・秘書学教授・現職ベテラン事務職員が講師となり開講され、学生の法律事務所へのインターン制度も実施されている。


(2)アメリカの制度報告
 パラリーガルの先進国であるところのアメリカの実態については、現地でパラリーガルとしての実績を持つ研究員とのメールでのやりとり、テキスト類の分析、インターネット上の資料の分析などを通してその実態にせまった。
 ABA(アメリカ法律家協会)のパラリーガルの定義によれば、「リーガルアシスタント、あるいはパラリーガルとは、教育、訓練、あるいは職務上の経験によって能力を得た、弁護士、法律事務所、企業、行政機関、あるいはその他の主体によって雇用された者であり、弁護士がその責任を負う、特に委任された実質的法律業務を遂行する者である」とある。この定義からは、パラリーガルの技能を身に付けるには、ABAの認可によるものを含めた教育プログラムを修了すること以外にも、OJT(on the job training :現任訓練)を通じて実地で修得することもあり、とくにパラリーガルについてはその仕事につくための特定の資格は存在しないこと、また、弁護士事務所にかぎらず、企業や行政機関など幅広い活躍の場があることなどが理解される。
 その実態としては、小規模のローファームでは経験の浅いパラリーガルは採用しない傾向が強く、パラリーガルプログラムを修了したての者は中・大規模のローファームでシニア・パラリーガルやアソシエイツの下で経験を積み、その後に専門分野の小規模ファームや企業法務などに移っていく傾向がある。
 さらには、弁護士の側にもパラリーガルを有効に活用できるように各種マニュアル本が発行されたり、弁護士を対象とした州単位でのセミナーが開催されているようである。


(3)ヨーロッパの制度報告
 ヨーロッパについては、まずドイツについて調査に着手した。ドイツでは、弁護士事務所に勤務する従業員のための「弁護士専門従業員(Rechtsanwaltsfachange-stellt)」という国家資格が存在する。そして、その資格を得るために「職業学校(Berufsuhle)」において3年間で履修しなければならない教育内容が連邦法(ReNoPat-Ausbildungsverordnung)によって規定されており、その総講義時間数は、960時間にも及んでいる。
 職業学校の生徒は弁護士事務所で勤務しつつ、週のうち一定の時間を通学にあてる。雇用契約書の雛型によれば、雇用主である弁護士事務所は、生徒に給料を支払いつつ、事務所においては弁護士事務の実務を訓練し、生徒が学校へ通学することに協力をしなければならない。職業学校には、通常15歳で入学するので、日本の感覚でいえば商業高校の定時制に弁護士事務の専門コースが設置されているといったところであろうか。18歳の時点でひととおりの法律知識と3年間の勤務経験を有し、法律事務所の有力な戦力となる。このような養成制度は注目に値する。しかしながら、この弁護士専門従業員がどのように活用され、どのような職域で勤務しているのかは、文献からは明らかにならず、追って調査を継続する予定である。たしかに、アメリカのパラリーガル、日本の法律事務職員とは事情が異なると思われるが、もとよりドイツにおいては、大学進学のための選抜方法、および法学部履修後の法曹資格付与のシステムが、アメリカ・日本とは大きく異なるので、単純な比較は難しい。毎年5万人に法曹資格が与えられるドイツにおいては、法曹資格を所持していながら実質的にはパラリーガルとして勤務する者も存在するはずであり、この点は追って調査が必要である。
 ヨーロッパのその他の国、とりわけイギリスとフランスについては、必ず調査が必要であるが、未着手である。またEUにおける、弁護士補助職の扱いについても可能であれば調査をする予定である。
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(2002.9.30発行)


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