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   設立10周年記念講演会
「債権法改正の論点」─ 内田貴・法務省参与をお迎えして
財団法人日弁連法務研究財団評議員 町村泰貴 

当財団北海道支部では、設立10周年記念事業の一つとして、秋の札幌に民法改正の中心人物である内田貴参与(法務省経済関係民刑基本法整備推進本部)・民法(債権法)改正検討委員会事務局長をお迎えして、記念講演会を開催した。短い時間でも集中した情報提供と討論で、充実した夕べとなった。

 講演会は北海道支部の矢吹徹雄弁護士(札幌弁護士会)が司会を務め、冒頭に新堂幸司理事長からの挨拶があり、続いて内田貴参与の講演が始まった。

1  改正総論

 今回の民法改正は、これまでの法務省が手がけてきた法改正とは全く性格が異なるという。経済界や世論からの不備の指摘に応えて行う立法ではなく、法務省が率先して改正に向けての検討を開始したところに特徴がある。
 なぜこういう改正が必要なのか?それは一言でいえば21世紀の日本の立ち位置を決める立法だからだという。
 立案のスタイルは、最初に学者だけのグループで原案を作る。歴史や世界の統一傾向を踏まえ、国際的に通用する改正案を策定するために、研究者による原案を作り、その後の法制審議会で各界の政策的課題や意見を吸い上げて修正するというプロセスを選択した。
 現実には、2006年から5年程度で立法するという時間的制約のもとで、5つの準備会(3名の起草委員と内田参与、法務省参事官の5名で構成)がそれぞれ起草し、各準備会主査を中心とする幹事会で調整し、全体会議でまとめるという過程を踏み、逐次ウェブページに公開されている。来年3月には案をまとめる予定である。

2  改正の対象と理由

 改正の対象を債権法としたのは、時間的制約の下で全部の改正が無理であること、民法典制定から今日まで改正されていないこと、世界的な改正の動きがあることが理由である。その他、親族相続法はデッドロックに乗り上げており、物権法には最近の改正があることなども理由となっている。ただし債権法といっても時効、法律行為など、総則編にも及んでいる。
 債権法改正の理由は4つ、(1)市民のための民法(事後救済型社会を目指した司法制度改革に対応し、市民が理解できて使える民法を目指す。民法の基本的なルールが分かる法文とする)、(2)現代化(契約の成立過程の法的効力や過失責任主義転換など)、(3)再法典化(特別法の取り込み)、(4)統一化への発信(ヨーロッパ中心主義へアジアからの発信)である。

3  改正の方向性

 隣接領域、すなわち商行為法や消費者契約法、労働契約法などとの関係についても検討がなされている。商行為法では商法学者のWGが逐条検討し報告書にまとめているが、商行為編総則規定について一般法化が適切であったり、商人・商行為のしばりが狭すぎ、事業という枠組みにすべきもの(もし民法典に取り入れるとすると民法典の中に「事業者」概念が登場する)などがある。消費者契約法、労働契約法との重複状態なども、議論が必要ではないかという。
 その他、各論としては担保責任が債務不履行の一類型であることを明確にしたり、債権譲渡の対抗要件に見られる不備の解消(例えば金銭債権譲渡の登記一元化など)、役務提供契約やファイナンス・リースのような典型契約の増加、消滅時効の改革(短期消滅時効の整理統合、原則的時効期間の短縮)について説明がされた。
 最後に、法典のあるべき形として小民法典主義と大民法典主義との選択を提示して、講演が締めくくられた。
 残された時間を使って、広い講堂を埋め尽くした参加者との間で、格差是正の要否や政策的価値判断との関係、安全配慮義務や人身損害への配慮、継続的関係の中で生じてきた債権の時効の扱い、法定利率の変動制への可能性など、引きも切らない活発な質疑が交わされた。



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(2009.1.15発行)


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