法科大学院評価基準(案)に対する ご意見等の募集結果について

法科大学院評価基準(案)に対する
ご意見等の募集結果について

平成16年5月27日
日弁連法務研究財団

当財団が実施を計画しております法科大学院の第三者評価(学校教育法第69条の4)につき、法科大学院評価基準(案) (PDF/60KB)についてのコメントを募集いたしましたところ(平成16年4月5日から4月26日まで)、4点につきご意見を頂きましたので、当財団の考え方を以下のとおり回答いたします。ご協力ありがとうございました。ご意見を踏まえ、できるだけよい評価基準としていきたく存じますので、今後とも宜しくお願いいたします。

1.情報公開について

(ご意見)「教育活動等に関する情報を適切に公開し、学内外からの評価や改善提案を受ける体制を備えていること。」という評価基準(1-3-1)が、一般から寄せられた「コメント」や「提言」に対して法科大学院に回答することを義務付けるものであるとすれば、その点は行き過ぎであり、そうするべきではない。私的憤懣を法科大学院教育に対する意見に仮託して陳べるもの等、回答する意味の無いものに時間を費やし回答するのは耐え難い。(回答)当該評価基準は、法科大学院が情報を適切に開示し、開示された情報に対するコメント等を学内外から受ける体制をとることが、法科大学院の自己改善活動をより適切なものとするという考えに基づくものです。従って、自己改善活動の中で有用と考えられるコメント等に、適切な方法で回答等の対応をすればよいものです。必ずしも個々のコメントや提言に対して、個別の回答をすることを義務づけるものではありません。この点を明確にするため、当該基準の解説3の記述を、以下のとおりに変更致します(下線部が変更した箇所)。

「学内外からの評価や改善提案を受ける体制」とは、開示情報につき質問があったり、法科大学院の教育研究活動等の改善についての提言等があった場合に、法科大学院として、必要に応じて説明する等の適切な対応を行うとともに、自己改善に活かすための体制を構築しきちんと機能させていることをいう。

2.法科大学院の管理運営の自主性・独立性について

(ご意見)「法科大学院の教育活動に関する重要事項が、法科大学院により自主性・独立性をもって意思決定されていること。」という評価基準(1-4-1)につき、以下の点が問題である。

  1. 「自主性・独立性」の意義が不明確であり、どのようなことが基準違反となるのか、参考例を挙げる等して明確にするべき。
  2. 教員の採用人数等財政面の考慮が必要なことについて学校法人の運営主体である理事会との関係で法科大学院の意思決定の自主性を認めるとすると私立学校法上の問題が生じる可能性がある。
  3. 学部との関係での法科大学院の自主性・独立性については、「研究科を組織するにあたっては、大学、大学附置の研究所等と適切な連携を図る等の措置により、当該研究科の組織が、その目的にふさわしいものとなるように配慮するものとする」との規定(大学院設置基準第7条)との関係で問題となる可能性がある。

(回答)上記ご意見の 1. から 3. に沿って回答いたします。  

  1. 当該評価基準は、法科大学院の教育活動の重要事項が、法科大学院により自主性・独立性をもって意思決定されることが、法科大学院の設置目的、つまり法曹養成のために適切であるという考えに基づいたものです。従って、法曹養成に向けてどのような教員を採用し、どのようなカリキュラムで、どのような教育を実施するか、どのような内容の図書等を揃えるか等の、教育の内容に関する重要事項については、法科大学院の自主的意思決定(専任教員による教授会等による意思決定)が尊重される必要があります。基準違反の具体例は、以下 2. 3. をご参照下さい。
  2. 但し、法科大学院が学校法人により運営されているものであり、財政面も含め学校法人の運営(理事会による意思決定)から全面的に独立することはありません。例えば、法科大学院が採用する教員の人数については、財政面の考慮も必要であり、法科大学院の意思決定を理事会の意思決定に優先させることとはなりません。しかし、採用する教員の選考にあたっては、法科大学院の自主性・独立性が最大限尊重される必要があります。法科大学院の人選決定に反する教員の採用を理事会で決定することは、当該評価基準にいう「自主性・独立性」に反することと考えられます。
  3. 一方、法科大学院の教育内容についての重要事項の意思決定は、学部に対する自主性・独立性をもってなされる必要があります。大学院設置基準第7条にいう、研究科と大学との「連携等」は、「当該研究科の組織が、その目的にふさわしいものとなるように」するべき配慮の一つであり、法科大学院がその設置目的(法曹養成)につき学部に対し自主性・独立性をもって意思決定することと矛盾するものではないと考えられます。

3.特徴の追求について

(ご意見)「特徴を追求する取り組みが適切になされていること」という評価基準(1-5-1)を独立の評価項目とする必要があるか疑問である。各法科大学院がどのような法曹の養成を目指しどのような教育を行うのかということは、別の評価基準(「基本方針の設定と周知徹底(1-1-1)や臨床科目の開設(6-1-4)、実社会との接触・交流(8-3)等により評価されうるものであり、当該評価基準により「特徴の追求」を重ねて評価する必要はない。また、全ての法科大学院に対して「特徴」を打ち出すことを求める必要性自体疑問である。(回答)当該評価基準は、各法科大学院が競争し、それぞれが理想とする多様な法曹を養成することが期待されていること(司法制度改革審議会意見書64頁)に鑑み、各法科大学院がそれぞれの「特徴」を追求する姿勢は非常に重要なことであり、独立の項目として評価基準を設定することが適切であるという考えに基づくものです。確かに、他の評価基準による評価と重複する部分があるかもしれませんが、他の評価基準では評価し得ない場合もあると思われます。例えば、「基本方針」には掲げていないけれども、口頭での議論能力の養成に非常に力を入れている法科大学院について、その取り組みの徹底ぶりを高く評価することはあるのではないかと思います。

4.教員のジェンダーへの配慮について

(ご意見)「教員の年齢及びジェンダーに配慮がなされていること」という評価基準(3-1-5)は、ジェンダーに関して何らかのアファーマティブアクションを行うことを求めるものか。また、この基準に関して、個別の教員の選考過程について調査することは人事の秘密を侵すこととなるので避けていただきたい。(回答)当該評価基準は、教育の多様性の確保の観点からは、教員のジェンダーが過度に偏らないように配慮がなされることが適切であるという考えに基づくものです。「配慮」には、中長期的採用計画の中での検討や、教員養成等の長期的な視点での取り組みも含まれます。ジェンダーバランスをとるためのアファーマティブアクション、例えば、女性の教員の割合を増やすために、適性や能力の面で要求水準を低く設定して採用選考を行うといったことを求めるものではありません。なお、教員の採用選考にあたって、どのような配慮が制度上なされているかを調査することはありますが、人事の秘密を侵すこととなるような個々の教員の選考についての調査をすることはありません。

以  上

法科大学院評価基準(案) (PDF/60KB)

法科大学院評価基準の解説(案) (PDF/338KB)

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