2025年4月24日
公益財団法人日弁連法務研究財団
当財団では、本年3月10日から4月11日まで、「法科大学院評価基準」の改定に関するパブリックコメント(意見公募手続)を実施しました。この結果の概要は次のとおりです。
・提出意見の概要
意見提出者数:3件
※以下、意見があった分野・項目のみを記載している。
基準・テーマ等 | 意見概要 |
全体 | 法曹コースは、法曹を志望する学生の時間的・経済的負担の軽減を図るとともに、司法試験合格までの予見可能性を担保し、優れた資質・能力を有する学生の法曹志望者を増やすことなどにより、予測困難な時代において専門的な法知識を活用して社会に貢献する法曹を輩出することを目的としている。 そして、法曹養成連携協定に関する運用ガイドライン(文部科学省高等教育局、最終改訂令和3年3月31日)8法曹コースの質保証においては、法曹コース及び法科大学院において責任ある教育を実施することを担保するため、法科大学院の認証評価において、①連携法科大学院が協定先の法曹コースに関し、協定に基づき行うこととされている事項の対応状況及び②特別選抜により連携法科大学院に進学した法曹コース出身者(法学部3年次終了後に早期卒業により法科大学院既修者コースに入学した者や、それ以外の者も含む。)の司法試験合格率を厳正に評価することとされていることから、評価基準、解説や評価の視点においてその旨を明確化・明文化するべきではないか。 |
■第1分野 運営と自己改革 | この点に関して、多段階評価を適合・不適合の単段階の評価に変更することは問題ないと考えられる。法科大学院制度の開始から20年が経過し、各法科大学院の理念や特色は相当に周知されているとみられ、その周知の工夫も限られており、多段階評価する指標も限定的であって、その意義が乏しくなっていると考えられる。 |
1-3 自己改革 3.解説(9) | ※意見の理由は「全体」参照 以下、私案を示す(下線部が私案)。 (9)当該法科大学院の学生及び修了者の司法試験合格率が著しく低い場合(全法科大学院平均の半分未満にある場合。以下同様とする。)や、当該法科大学院の学生及び修了者の司法試験合格率は高いものの、当該法科大学院の退学率や留年率が高い等の事情から教育の方針や手法に課題が推察される場合には、自己改革の取り組みが適切になされていないのではないかとの強い疑いが生じる。 この場合には、当該法科大学院において、GPAや共通到達度確認試験の結果等の客観的な指標を踏まえて法曹養成教育の問題点の分析を適時に行っているか、退学率及び留年率や学生及び修了者の司法試験合格率を改善する方策の検討と検討結果に基づく十分な改革を適時に実施しているか及び実施された改革の成果がどの程度表れているか等を考慮して、自己改革の取り組みが適切になされているかを評価する。 |
1-3 自己改革 3.解説(11) | ※意見の理由は「全体」参照 以下、私案を示す(下線部が私案)。 (11)特別選抜(2-2における解説(1)参照)により法曹コース(1-7における趣旨参照)から法科大学院に入学した者の退学率や留年率が高い場合や司法試験合格率が低い場合も法曹コースとの連携の趣旨に照らして、自己改革の取り組みが適切になされていないのではないかとの強い疑いが生じる。 この場合には、当該法科大学院において、法曹養成連携協定や特別選抜の問題点、法曹コース出身者に対する法曹養成教育の問題点などの分析を適時に行っているか、法科大学院に進学した法曹コース出身者の退学率及び留年率や司法試験合格率を改善する方策の検討と検討結果に基づく十分な改革を適時に実施しているか及び実施された改革の成果がどの程度表れているか等を考慮して、自己改革の取り組みが適切になされているかを評価する。 |
1-6 学生への約束の履行 3.解説(1) | 在学中受験資格の取得に必要な要件及びその運用は、学生が極めて強い関心を持つ事項であり、これを「学生に約束したこと」に含めることは適切であると考えられる。 |
1-7 法曹養成連携協定の実施状況 3.解説(1) | ※意見の理由は「全体」参照 以下、私案を示す(下線部が私案)。 (1)「法曹養成連携協定において法科大学院が行うこととされている事項」は、当該法科大学院が複数の法曹養成連携協定を締結している場合には、各法曹養成連携協定おいて当該法科大学院が行うこととされている事項をいう。 なお、法曹コース出身者につき、当該法科大学院の退学率や留年率が高い場合や、法曹コース出身者の司法試験合格率が著しく低い等の事情から入学者選抜や既修者認定の他、教育の方針及び手法に課題が推察される場合には、当該法科大学院において法曹養成連携協定において法科大学院が行うこととされている事項が適切に実施されていないことが強く推察され、法曹コース制度の趣旨に沿った教育が適切に実施されていないのではないかとの強い疑いが生じる。 この場合には、当該法科大学院において、GPA等の客観的な指標を踏まえて法曹養成連携協定の実施状況についての問題点の分析を適時に行っているか、退学率及び留年率や学生及び修了者の司法試験合格率を改善する方策の検討と検討結果に基づく十分な改革を適時に実施しているか及び実施された改革の成果がどの程度表れているか等を考慮して、法曹養成連携協定の実施が適切になされているかを評価する。 |
■第2分野 入学者選抜 | |
2-1 入学者選抜基準等の規定・公開・実施 3.解説(3) | ※意見の理由は「全体」参照 以下、私案を示す(下線部が私案)。 (3)「法曹養成という目的に照らし、当該法科大学院への入学を認めることが相当な者」とは、当該法科大学院の教育を経ることによって法曹に必要とされるマインドとスキルを身に付け得る者をいう。 そうすると、当該法科大学院の退学率や留年率が高い等の事情から入学者選抜における学生受入方針、選抜基準、選抜手続や選抜の実施状況及び学生及び修了者の司法試験合格率が著しく低い等の事情から入学者選抜における課題が推察される場合には、法曹養成という目的に照らした入学者選抜が適切になされていないのではないかとの強い疑いが生じる。 この場合には、当該法科大学院において、GPAや共通到達度確認試験の結果等の客観的な指標を踏まえて入学者選抜の問題点の分析を適時に行っているか、退学率及び留年率や学生及び修了者の司法試験合格率を改善する方策の検討と検討結果に基づく十分な改革を適時に実施しているか及び実施された改革の成果がどの程度表れているか等を考慮して、入学者選抜が適切になされているかを評価する。 |
2-1 入学者選抜基準等の規定・公開・実施 6.評価判定の視点(4) | 解答・解答例の公開は、その解答しか許容されないのではないかとの誤ったメッセージを受験生に与えるおそれがあり、また、出題の趣旨を十分に理解しないまま解答例を暗記することを受験生に助長しかねず、適切ではない。解説改定案28頁に既に記載されているように、出題の趣旨をある程度具体的に示すことによって、入学者選抜基準・選抜手続の適切な実施・公開の趣旨は実現されると考えられる。 |
2-1 入学者選抜基準等の規定・公開・実施 6.評価判定の視点(4) | 「出題の趣旨及び解答又は解答例(ここでいう解答又は解答例は、解答作成に資する詳細な出題の趣旨も含む)」と記載されているが、「解答又は解答例」に「詳細な出題の趣旨も含む」と記載されているので、解答や解答例までは公開せず、詳細な出題の趣旨までを公開していればよいか。 解答又は解答例まで公開することは、各大学において、問題(出題)によっては困難な場合もあるので、解答又は解答例の公開までは不要(出題趣旨の公開で十分)と考える。 |
2-1 入学者選抜基準等の規定・公開・実施 6.評価判定の視点(9) | 障害等のある入学志願者への合理的配慮の提供に関する対応方法を公開していることが評価判定の視点に加えられたことは、昨今の法令の規定に照らし適切であると考える。 |
2-2 既修者認定〈既修者選抜基準等の規定・公開・実施〉 3.解説(2) | ※意見の理由は「全体」参照 以下、私案を示す(下線部が私案)。 (2)「適切な法学既修者の選抜基準」、「適切な既修単位認定基準」とは、既修単位認定を行う科目のすべてにつき、当該法科大学院で単位認定をする場合と同程度以上の能力のあることを認定するという目的に照らして、単位認定の基準及び方法に合理性が認められ、かつ公平・公正な基準であることをいう。ここでの選抜基準の合目的性は、未修者との間の公平性の問題でもあり、また、成績評価の厳格性の問題でもある。 そうすると、当該法科大学院において法学既修者選抜入学者及び既修単位認定者の退学率や留年率が高い等の事情から法学既修者選抜・既修者単位認定における学生受入方針、選抜・認定基準、選抜・認定手続や選抜・認定の実施状況及び法学既修者選抜により入学した学生及び既修単位認定を受けた学生及びその修了者の司法試験合格率が著しく低い等の事情から法学既修者選抜及び既修単位認定における課題が推察される場合には、法曹養成という目的に照らした法学既修者選抜及び既修単位認定が適切になされていないのではないかとの強い疑いが生じる。 この場合には、当該法科大学院において、GPA等の客観的な指標を踏まえて法学既修者選抜及び既修単位認定の問題点の分析を適時に行っているか、法学既修者選抜により入学した学生及び既修単位認定を受けた学生の退学率及び留年率やその学生及び修了者の司法試験合格率を改善する方策の検討と検討結果に基づく十分な改革を適時に実施しているか及び実施された改革の成果がどの程度表れているか等を考慮して、法学既修者選抜及び既修単位認定が適切になされているかを評価する。 |
2-3 入学者の多様性の確保 3.解説(1) | 「実務等の経験のある者」について「最終学歴卒業後3年を経過している」という要件から「社会的活動に従事した期間が通算して3年以上」とすることを原則とする趣旨の改訂は、実務経験の実態をより反映した基準とする意味で適切であると考える。 |
■第3分野 教育体制 | |
3-4 教員の年齢構成 5.判定の目安 B | 「60歳以上の教員」が過半数を超えていないことをB評価以上の目安とすることから、「65歳以上の教員」に改訂することは、65歳定年制の大学にとっては意味がない基準となろうが、本法科大学院のように70歳定年の大学にとっては、人事の運用上柔軟性が確保できる点で重要な意義が認められる。60歳以上はおろか65歳以上でも元気に第一線で研究・教育に従事している人材が多いという大学の実態にも適合的であると考える。 |
3-5 教員のジェンダーバランス 5.判定の目安 | 専任教員中の女性比率のB評価以上の目安を10%から15%に引き上げることは、昨今の社会の趨勢に適合していると考えられる。 |
■第5分野 カリキュラム | |
5-1 科目設定・バランス 3.解説 (11) | 展開・先端科目該当性の判断についてより詳細な説明が付加され、しばしば議論となる「隠れ基本科目」の問題の解消の一助になると思われる。 |
5-2 科目の体系性 6.評価判定の視点(3) | 司法試験在学中受験資格を取得することができる授業科目のコマ組みとなっていることなどの事項が評価判定の視点に加えられたことは、学生のほとんどが司法試験在学中受験を希望していることに照らして適切であると考える。 |
5-5 履修選択指導等 6.評価判定の視点(4) | 司法試験在学中受験に関する履修指導が評価判定の視点に加えられたことは、学生のほとんどが司法試験在学中受験を希望していることに照らして適切であると考える。 |
■第7分野 学習環境及び人的支援体制 | |
7-1 クラス人数 | 1クラスについて適切な最低人数を10名に設定していると見られる現行基準は、やや硬直的に過ぎると考えられるので、「教育効果をあげることができないほどの少人数」という形で定性的に定める方が、より実態に即した判断を可能とするものとして妥当であると考える。クラス人数を原則として履修登録者の人数で判断し、学期途中に休学者や退学者等が発生して人数が減少しても基準に抵触しないと評価することも適切であると考える。 |
7-6 教育・学習支援体制 | 現行基準の7-8の「学生へのアドバイス」を7-6の学生の学習支援体制の中に組み込む改訂も、妥当であると考えられる。現行基準では、TAやAAなどの補助教員の仕組みが、7-6と7-8のいずれの評価事項であるかが分かりにくいといえる。 |
7-7 学生生活支援体制 6.評価判定の視点(5)(6) | 障害のある学生の修学に関する事項が評価判定の視点に加えられたことは、昨今の法令の規定に照らし適切であると考える。 |
■第9分野 総合評価・適合認定 | 司法試験の合格者数や合格率だけに着眼せず、退学率や留年率等も総合的に考慮することは適切であるといえる。とりわけ、合格率を向上させることを目的として学生を留年させる(司法試験在学中受験資格を与えないようにする)ような取扱いは、法曹養成教育機関としての法科大学院の役割を十分に認識しているとはいえず、消極的に評価するべきである。 |
9-1 法曹に必要なマインド・スキルの養成〈総合評価及び適合認定〉 3.解説(5) | ※意見の理由は「全体」参照 以下、私案を示す(下線部が私案)。 (5)②総合評価及び適合認定における留意点 総合評価及び適合認定においては、法曹養成という法科大学院の目的及びその社会的使命にかんがみ、教育の過程全般において社会から期待される「法曹に必要なマインドとスキル」を養成する教育が行われているか及び、その教育の結果「法曹に必要なマインドとスキル」を備えた法曹を恒常的に輩出しているかという、法曹養成教育の達成状況が評価されなければならない。 なお、達成状況の評価に当たっては、単に司法試験の合格者数が多いことや合格率が高いことのみで本評価基準で積極的に評価されるわけではなく、当該法科大学院の退学率や留年率等も総合的に考慮して判断されることに注意が必要である。 また、法曹養成連携協定を締結している法科大学院については、法曹コース及び法科大学院において責任ある教育を実施することを担保するため、①連携法科大学院が協定先の法曹コースに関し、協定に基づき行うこととされている事項の対応状況(1-7)及び②特別選抜により連携法科大学院に進学した法曹コース出身者(法学部3年次終了後に早期卒業により法科大学院既修者コースに入学した者や、それ以外の者も含む。)の司法試験合格率について厳正に評価する。 そして、夜間開講のみ実施している法科大学院、法学未修者の割合が高い法科大学院、地方にある法科大学院など各法科大学院の個別の事情にも留意する。 |
9-1 法曹に必要なマインド・スキルの養成〈総合評価及び適合認定〉 6.評価判定の視点(5)⑨ | ※意見の理由は「全体」参照 以下、私案を示す(下線部が私案)。 (5)上記(3)・(4)を含め、入学者選抜から成績評価・修了認定までの過程全体が、下記視点を踏まえた上で、組織的に適切に実施され、機能しているか。 ⑨ 第9分野 当該法科大学院の学生及び修了者の司法試験合格率が著しく低い場合や、当該法科大学院の学生及び修了者の司法試験合格率は高いものの、当該法科大学院の退学率や留年率が高い等の事情が存在すること。特に、法曹養成連携協定を締結している法科大学院については、法曹コース出身者につき、当該法科大学院の退学率や留年率が高い場合や、法曹コース出身者の司法試験合格率が著しく低い等の事情が存在することから教育の方針や手法に課題が推察される場合には、当該法科大学院において「法曹に必要なマインドとスキル」を養成する教育が適切に実施されていないのではないかとの強い疑いが生じる。 その結果、第1分野ないし第8分野のすべての評価基準を満たしていたとしても、以上の点が消極的に評価される場合がある。 なお、法曹養成連携協定を締結している法科大学院については、法曹コース及び法科大学院において責任ある教育を実施することを担保する観点から、①連携法科大学院が協定先の法曹コースに関し、協定に基づき行うこととされている事項の対応状況(1-7)及び②特別選抜により連携法科大学院に進学した法曹コース出身者(法学部3年次終了後に早期卒業により法科大学院既修者コースに入学した者や、それ以外の者も含む。)の司法試験合格率について厳正に評価し、当該法科大学院において「法曹に必要なマインドとスキル」を養成する教育が法曹コース制度の趣旨に沿って適切に実施されているか厳正に評価する。 |